秋葉原日記 (ライブラリ)

芸術と技術のコラボレーション

 田中正平記念フォーラム「芸術と技術の出会いによる新領域の創成」と題するちょっとユニークなイベントが2日土曜日、千葉県柏市の東京大学柏キャンパスで行われた。
 東京大学大学院新領域創成科学研究科の主催で、会場は東京大学柏図書館メディアホール。この催しは一般にも公開され、満員の盛況ぶりだった。
 フォーラムでは2件の講演が行われた。
 1件目は、技術側からのもので、我が国電子楽器のパイオニアでありローランドの創業者でもある梯郁太郎氏が50年になるという電子楽器開発の歩みを講演した。
 この中で梯氏は、新しい音楽が支持されるにはハードウエアとソフトウエアに加え、感性であるアートウエアが不可欠だと論じた。
 また、音楽の世界では楽器は作り替えてはいけないという不文律があり、この100年ほど新しい楽器は生まれてこなかったとし、それがシンセサイザーの登場で従来の楽器の電子化が進められており、オルガンやアコーディオン、ピアノなどへと進んできているという。特にピアノの場合減衰音の電子化かがやっかいだったと振り返っていた。
 声の電子化も進められているといい、一人の歌手が電子ピアノで歌いながら演奏しているビデオが紹介されたが、まるで大聖堂の大合唱のような迫力で、これがとても一人の演奏者によるものとは想像もできないような内容だった。
 なお、梯氏は中国から律令を取り入れた遣隋使・遣唐使、欧米から近代文明を持ち込んだ明治維新、アメリカの文化を輸入した終戦に続き、東日本大震災を経た今はまた第4の変革期にあるとし、ただし、このたびは過去3回と違ってサンプルのない時代に入ったと指摘、4回目の大変革では新しい領域を創造する必要があると訴えていて、いかにも創業者らしい示唆に富んだ力強い講演で感銘を受けた。
 講演の2件目は芸術サイドからのもので、シンセサイザーを駆使した作曲、演奏活動で知られる冨田勲氏がシンセサイザーに取り組んだ経緯を自らの作品を中心に解説した。
 冨田氏は講演の中で、シンセサイザーを使うことによって音楽の表現の幅が広がったと述べていた。
 講演の後はオルガンコンサートがあり、オルガン演奏で我が国第一人者である橘ゆり氏がローランドオルガンを用いて演奏を披露した。
 演奏はまるで1台の電子オルガンで行われているとは思われないほど多彩で豊かな音楽世界が広がっていた。
 なお、この柏キャンパスは、本郷、駒場に次ぐ東大で3つめのキャンパスで、10年前に設置された。
 学融合を指向する研究が特徴で、大学院新領域創成科学研究科、物性研究所、宇宙線研究所、数物連携宇宙研究機構、大気海洋研究所や4つの研究センターなどで構成されており、主に東大の理系の研究部門が集約されている。教職員、大学院生数は約3千名とのこと。

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(梯郁太郎氏の講演の模様)
  

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