秋葉原日記 (ライブラリ)

豊崎由美『ニッポンの書評』

 著者は、本書奥付の著者紹介によると、ライター、ブックレビュアーとある。つまり書評家のことだろうが、書評家ではおこがましいと思ったらしく自らはそうは名乗らないようだ。
 本書では、書評と批評の違い、書評の文字数など日本の書評の特徴などと独特な書評論が展開されている。
 まず、書評と批評の違いについては、「批評は対象作品を読んだ後に読むもので、書評は読む前に読むものだ」と規定している。
 で、「書評家が果たしうる役目はといえば、これは素晴らしいと思える作品を一人でも多くの読者にわかりやすい言葉で紹介すること」としている。
 実際、自分も本の購入にあたって書評は随分と参考にさせてもらっていて、新聞や雑誌など数紙誌は毎号チャックを怠らないようにしている。
 とくに自分の場合にはひいきの書評家を持つことも有効だと思っていて、池澤夏樹や川上弘美などを大事にしている。このひいきの書評家というのは自分の読書傾向に近い本を取り上げてくれるからありがたいのである。
 また、書評は読む前に読むものというのが前提だから粗筋紹介で、とくに結末のネタ晴らしについては厳に慎まなければならないと論じている。これはミステリーに限らないとも述べているが、確かに、とくにミステリーでは結末がわかってしまってはこれほど興の削がれることもない。
 一方、日本と外国との書評事情に関連して、日本の新聞・雑誌の書評文字数は300字から1200字が中心で、これは外国に比べて概して短いと指摘している。また、新聞の書評欄の量的比較を行っていて、日刊全国紙5紙の中では「毎日新聞がかなり読みでのある書評欄になっている」と評価している。
 著者はなかなか大胆で、朝日、毎日、読売、日経、産経、東京の6紙を対象に掲載された個々の書評を採点するということをやってのけている。
 ある特定の日を切り取っていて取り上げられた書評は43本。これらを特A、A、B、C、Dの5段階に評価している。
 最も評価の低いDは「取り上げた本の益になっているどころか、害をもたらす内容になってしまっている」と規定されていて、この烙印を押されたものが1本あった。その理由はどうやら結末を明らかにしてしまったからというもののようで、これはネタ晴らしを厳しく断罪してとも言えるのだろう。
 もっともこのあたりは、『文学賞メッタ斬り!』などの著作もある著者の本領発揮ということなのだろう。
 自分もこの『秋葉原日記』で読んだ本のことをたびたび書いている。もとより書評などというつもりもないし、「昨日●●の『▲▲』を読んだ。面白かった」程度のもので、恥ずかしいくらいのものだが、読書日記ということで厚かましくも続けている。
 ただ、この読書日記も本の紹介にはなっているはずだから、取り上げる本は自分が読んで面白かった本にしようとは心掛けている。
 この点では、本書著者のいう素晴らしい本を紹介することが書評家の役目と同一の方向であろうから同意できるのだが、本書自体は必ずしも読みやすいという内容ではなかった。
 つまり、著者は50歳の女性なのだが、言葉遣いがときにぞんざいだったりはすっぱであり、このあたりは著者の持ち味なのだろうが、読んで滑らかさには欠けた。
(光文社新書)

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お断り)著者名豊崎の崎は、正しくは嵜の山を冠ではなく偏にしたもの。ブログ使用文字制限からここでは崎とした。

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