秋葉原日記 (ライブラリ)

「画家たちの二十歳の原点」展

 平塚市美術館で開かれていた。
 なかなかすばらしい企画で、久しぶりに美術館のキュレーターの実力というものを知ったような内容だった。
 画家たちの顔ぶれがすごい。
 黒田清輝、梅原龍三郎、岸田劉生、村山槐多、松本竣介、鴨居玲、草間彌生、池田満寿夫、森村泰昌、石田徹也などと明治から現代に至るそうそうたる作家が揃っていて、その数、油彩画を中心に54作家120点。
 こうした画家たちの二十歳前後の作品が展示されていて、見応えのある作品が多くてじっくりと見て回った。
 やはり二十歳の頃の作品ということだろうが、ナイーブさと同時に複雑な印象をもたらされた。
 未熟と成熟、爆発と衝動、閉塞感と焦燥、自己と疎外などと訴える力が強くて、さらっと見て通り過ぎることができず、それぞれに作品と対置する時間がおのずと長くなり、時にはまるで格闘するような趣にすらなったのだった。
 二十歳の頃の作品だから自画像も多い。元来が自画像が好きな自分だからこれは堪能できた。
 中村彜の自画像は2点あっていずれもよく知られたものだが、ごつごつした顔にはにかんだようで不安そうな顔に印象が強く、闇に浮かぶ表情はレンブラントの影響か。
 佐伯祐三の自画像は3点が出品されていたが、このうち19歳の時の作品で正面を直視したものは強い意志が目つきと表情全体にあふれていた。
 一通り見て回った後もう一度戻ってじっくりと見た作品が林倭衛の「サンジカリスト(浅枝次朗)」だった。
 1916年21歳の時の作品らしいが、サンジカリストというタイトルもすさまじい。当時はサンジカリズムという言葉は一般的だったのだろうか。サンジカリストとはこの場合労働組合主義活動家という意味だろうが、世界史的にはアナルコサンジカリズムといってアナキズム実践の一つの有力なプロセスだった。
 当時、大正デモクラシーの時代、大杉栄の影響などが広まっていた頃であろうし、モデルの浅枝次朗はそのシンパだったのであろう。
 そして画家もその活動にシンパシィを感じていたのだろうが、作品は鋭い目つきにゆがんだ顔があって力強い自我が感じられ、モデルを通して画家の内面がえぐり出されているようにも思われた。

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(会場で配布されていた展覧会のチラシから引用)

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