秋葉原日記 (ライブラリ)

中国版新幹線

 先週の上海出張中、中国版新幹線に乗る機会があった。南京に所要があったためで、往復に「上海‐南京高速鉄道」を利用した。
 6月1日上海虹橋駅。ここは上海の都心から西北に位置し、地下鉄が直接乗り入れている。その地下鉄を降りたってわかったが、上海虹橋空港と隣接しており、空港ビルと鉄道駅と二つの巨大なターミナルが並んでいる。こういうように航空と鉄道二つのターミナルビルが並んでいるところというのは実は世界的にも珍しいのではないか。
 上海には都心にある上海駅とこの虹橋駅と高速鉄道のターミナル駅が二つあって、上海発着列車の約4割はこの虹橋駅が始終点となっているようだ。とくに高速鉄道の発着頻度は高いとのことだった。
 駅ビルに入ってびっくりした。とにかく大きいし立派だ。天井の高い大屋根が駅全体を覆っている。とても鉄道の駅舎とは思えず、まるで空港のターミナルビルかと見間違いするほどだ。真新しい建物で開業して1年になるらしい。
 ホームが30番線まで同じレベルで整然と並んでいるというのも圧巻で、欧米のターミナル駅を随分と利用したが、これほどの規模の鉄道駅は例がないと断言できよう。
 切符売り場やロビーは3階にあり、列車は2階から発着している。地下鉄からエスカレータで上がってくると直接3階に達するからとてもアクセスが便利だ。なお、駅ビルに入るには空港と似たような厳重な手荷物検査を通過しなければならない。
 まず切符を買うこととしたが、この窓口が長蛇の列。利用者の多い割には窓口の数が決定的に少ないということが一つと、この日6月1日から高速鉄道の乗車券を購入するする際には身分証明書の提出が義務づけられたためで、中国国民、外国人を問わず例外はないとのこと。自分もパスポートを提示して切符を買うことができた。この日から施行された制度だから余計混雑していたのかもしれない。
 切符売り場の窓口の上部には、行き先・列車番号・発車時刻・切符残枚数が表示された電光掲示板があるのだが、これを見ると、列車はおよそ中国中の諸都市と結んでいるようで、これもなかなか壮観。中国鉄道網の充実ぶりがわかる。
 このうち、上海‐南京線は幹線のようで、列車は15分間隔程度なのだが、入手できたのは1時間も先に発車する列車のものだった。相当込んでいるようだ。
 切符券面には、発車年月日時分、車両番号・座席番号、車両等級、発駅・着駅、列車番号、料金などに加えパスポート番号も印字されている。 
 自分が購入できた切符は、2011年06月01日10:23発、08号車034号、2等車、G7132列車、上海虹橋発南京行きというもので、料金は146元(約2,000円)。在来線が50元程度らしいからやはり中国でも高速鉄道の運賃は高い。
 発車20分前になって改札が始まった。改札は列車ごとつまり発車ホーム別で、G7132列車は28番線だった。
 自動改札を抜けてホームに降り立つと列車が入線して待っていた。この虹橋始発の列車である。
 どこかで見たことのある車両だと思ったが、それもそのはずこの車両はJR東日本のE2系がモデル。JR東日本が技術供与し、川崎重工が製造したもの。車両にはCRHという車両の種類と、和諧号の愛称名が大きく表示してある。
 実はこの車両はいわく付きで、当初JR東日本が中国側と交渉した際には数百両編成の受注を想定したのに、実際に川重が製造したのはたったの3編成分だけで、残る大半は一部の部品供給のみで、結局製造は中国企業が実施した。しかも、中国側は国内の対日感情をあおるからというわかったようで訳のわからない理由で、日本の技術供与とは一切公的には認めず、すべて独自開発だという立場を貫いている。
 列車に乗り込むと、車内は座席が2列+3列の配置。これも日本の新幹線そのもの。先頭車両の一部が1等車になっている。すべて満席である。
 さて、列車は定刻の10時23分虹橋駅を滑るように走り出した。静かだし揺れも少ない。
 発車して速度を上げてゆき、しばらくして時速は300キロを超した。ただ、300キロ超運転はほんのわずかの時間だけで、大半は250キロ前後の運転。車内の速度表示を見ていたのだが、最高速度はそろそろ南京が近づいたかと思われた11時34分頃の時速330キロだった。結局、300キロを超えたのはわずかに2回それも瞬間程度だけだった。
 中国はすべてに世界一を目指してきていて、鉄道の世界最高速もその一つ。しかし、路盤、線路、車両、運転システムなどの能力不足が露呈し、300キロ超運転は難しくなってきていて、250キロ程度の運転に終始しているというのが実情のようだった。
 列車は、途中、蘇州、無錫、威野堰、丹陽、鎮江と停車した。沿線は揚子江デルタと呼ばれて近年工業化の急速に進んでいる一帯で、車窓風景も工場、住宅、農地が交互に表れていた。平坦なところを淡々と走っているから変化に乏しく、車窓を楽しむという風情ではない。
 そうこうして南京12時17分着。上海から1時間56分の所要時間であった。上海‐南京間は303キロというから、これは東京から豊橋の先というころにあたり、これなら日本の新幹線のほうが早いということになってしまう。
 中国もこの上海‐南京高速鉄道が開業した昨年7月には、最高速度350キロ運転で所要時間も73分としていたものだったから、開業後明らかになった自主開発部分の拙速ぶりが悪い方に露呈したこととなってしまったのだろう。
 中国の新幹線網の建設は顕著で、今月中には北京‐上海間全長1318キロが開業する計画となっており、当初計画では時速380キロから400キロ超運転で最速4時間の営業を目指していたが、安全に安定した運行を第一とせざるを得ない状況となってせいぜい200キロ代後半のスピードを余儀なくされ、当面は5時間で中国2大都市間を結ぶという。

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(上海虹橋駅で発車を待つ和諧号CRH車両)


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