秋葉原日記 (ライブラリ)

安藤優一郎『江戸っ子の意地』

 幕末から維新にかけては数多くの文献や物語を手にすることは容易だが、意外に目にすることの少ないのが幕臣たちの動向。あったにしても大半は幕府を倒し新政府を樹立したものたちからの視点で書かれたもの。
 本書は、瓦解した幕府にあって幕臣たちはどのように維新後の生活を送ったのか、それも幕臣たち自身の史料を渉猟して書かれていて、それが本書の特徴。なるほどと思わせるエピソードも多くて興味深く読ませられた。
 例えば、江戸町奉行所のこと。
 江戸に二つあった北町、南町の両奉行所は、江戸城無血開城と同じ日に旧幕府から新政府へ引き渡しが行われた。時に慶応4年5月23日午前10時。奉行所側では抵抗せずに明け渡したのだという。
 その数ヶ月後には江戸が東京と改められ、解体された町奉行所は市政裁判所と改められた。これに伴い奉行はもとより、与力や同心といった職制もなくなった。
 さらに市政裁判所は東京府の設置に伴い解消され、東京の治安は東京府が担うこととなった。
 与力や同心は引き続き同職にとどまることもできたようだが、新政府への反発もあって職を辞するものが少なくなかったらしい。
 その後、警察制度が導入され、司法省警保寮などを経て明治7年東京警視庁が設置された。
 当時の巡査は邏卒と呼ばれたが、鹿児島県出身が多かったという。
 本書ではこうした江戸町奉行所のその後を追跡しながら、経済界で活躍した渋沢栄一や益田孝など旧幕臣たちの動向を取り上げ、次第に新政府においても頭角を現していく様子を描き出している。
 ただ、構成が絞り切れていないし、引用と地の文との重複も多くて読んで盛り上がりに欠け、せっかくの貴重なエピソードが生き生きとしなっかったことは残念だった。また、書名が本書内容に対して必ずしもそぐわなかった。
(集英社新書)

edokkonoiji.jpg

 

バックナンバーへ

お勧めの書籍