秋葉原日記 (ライブラリ)

東野圭吾『麒麟の翼』

 ベストセラーが続く加賀シリーズの最新作。小説のみならずテレビドラマ化もされ幅広いファンを持つ。著者の作品は直木賞を受賞した傑作『容疑者Xの献身』などを楽しんできたが、このシリーズは初めて手に取った。
 主人公は、日本橋署の刑事加賀恭一郎。階級は警部補。長身、独身。
 事件は、日本橋の橋上で胸部をナイフでひと突きに刺され欄干に寄りかかるように倒れていた男性が発見されたことで発生した。
 被害者は青柳武明55歳。建築部品メーカーの製造本部長とわかる。刺されたのは午後9時頃で、場所は江戸橋にある地下道と特定された。刺された後自力で日本橋まで移動したらしい。発見後直ちに病院に搬送されたが間もなく死亡が確認された。
 事件発生から2時間後、現場付近で不審な男が発見され、パトロール中の警官が職務質問をしようとしたところいきなり逃げ出し、通りかかったトラックにはねられてしまった。男は被害者の財布を所持していた。病院に運び込まれたが昏睡状態にあり、回復を待って事情聴取を行おうとしていたところ意識不明のまま死亡。
 事件は被疑者死亡で解決かと思えたが、裏付け捜査のために特別捜査本部が設置された。加賀の相方は警視庁捜査一課刑事松宮脩平。以前にも加賀と組んだことがあり、加賀の従弟でもある。加賀とは兄弟のようにして育った。
 単純そうに見えた事件だったが、捜査を進めるうちに意外な事実が次々に浮かび上がってくる。
 加賀刑事は幾つかの難事件を解決したことで知られるが、階級にこだわらず、手柄を誇張せず、煩雑な人間関係を嫌ってか本庁勤務を好まないとの評判。
 捜査線上に表れてくる細かな事象を丹念に詰めていくのが加賀の捜査手法。何事もないがしろにしない粘り強さが信条だし、多面的に事件をとらえる能力に長じている。私生活も顧みない仕事一途の刑事で、老成した年代ではないが靴の減るのをいとわない。チームワークを無視するわけではないが独自の捜査感を持つ。
 本書の面白さはこの加賀刑事の魅力に尽きる。
 ただ、謎解きとしての最後のどんでん返しは拍子抜けするほどあっけなくて物足りなかった。
 ところで、本書巻末に次のような断り書きがあった。
 「著者は本書の自炊代行業者によるデジタル化を認めておりません。」
 自炊とは印刷本をスキャニングしてデジタル化する技術のことで、代行業者はわずか数百円でこの業務を代行しており、これが蔓延しては著者のみならず出版社も、さらに電子書籍出版も侵害されるとして社会問題となっているもので、著者はこの反社会的行為に対し明確に拒絶の姿勢を示したものと受け止められる。
(講談社刊)

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