秋葉原日記 (ライブラリ)

ミカンの花

 いつも散歩で通っている道でも、季節によって樹木の様相は変わる。
 生い茂った状態だけを見ても何の木なのかわからなくて、果実を付けて初めて何の木だったのかわかるようなこともあるし、花だけを見ても何の木なのかその名前に見当もつかない場合もある。逆に、木を見れば何の木かわかるのに、花が咲き実を付けるとなんという名前だったか迷ってしまうようなこともある。
 桐の木はすらりと姿のよい高木なのだが、夏に咲く淡い紫色の房状の花や、晩秋に樹木一杯に付ける赤い実は、あるいは都会の中では珍しいものかもしれない。
 ヤマボウシは、初夏にハナミズキに似た白い花を咲かせた後、直径が1、2センチくらいの黄色みがかったサクランボのような実を付け、秋には見事な紅葉となるから、花から果実、紅葉へと3回も楽しませてくれるようなものもある。
 隣のお宅の庭に白い花を咲かせている樹木がある。木は高さ数メートルほどの中高木で、ごわごわした葉が密度濃く生い茂っている。
 花は直径数センチ、5弁の星形のように開いていて、ツンとしたいい香りを放っている。
 毎日見かけている樹木なのにこの白い花を咲かせている木の名前が一瞬わからなかった。
 それで、このお宅の奥さんに尋ねたところ「あらいやだ、ミカンでしょう」と笑われた。
 そういわれて初めてこの木が毎年ミカンの実をたくさん付けていることを思い出した。しかも、このお宅のミカンはとても甘かったことまでも知っていたのだった。
 花を愛でる木、実を楽しむ木、紅葉が美しい木、そして材木として使われる木などと樹木も様々。最も価値の高い状態では何の木か名前がすぐにわかっても、季節がずれると普段は見慣れていた木も見当もつかなくなるようなこともあるのだった。

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