秋葉原日記 (ライブラリ)

藤森照信『建築とは何か 藤森照信の言葉』

 著者は建築史家、建築家。建築探偵などとも自称し著作も多く人気が高い。特に建築史家としては我が国で初めてこのジャンルを築いた第一人者。
 本書ではその著者の建築に対する考え方、思考形成の過程などが盛り込まれていて大変興味深い。ただ、本書は建築専門誌に連載をされたものをまとめたもので、いわば専門家向けのものであり、門外漢の自分にとってはなかなか難しかったが、これが何故か全編飽きることもなく読み切る面白さもあった。このあたりが著者が単なる建築家にとどまらないゆえんのものであろう。
 本書は2部構成になっている。
 第1部では、自らの建築史家としての歩みを振り返りながら内外の建築史を概観、建築とは何かに迫っている。
 藤森のすばらしいところは建築史に登場する主要な建築の大半を実地に見ていることで、ここでも世界の建築家とその作品が次々と登場してくる。
 例えば、ル・コルビュジェの<ロンシャンの教会>について「20世紀の技術と材料で作られたパルテノン神殿だ」と評価し、20世紀の巨匠たちを20世紀建築史への本質的貢献度を指標として並べるなら「ミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジェ、フランク・ロイド・ライト、ガウディの順になることは誰も異存はないと思う」と述べている。
 面白いのは「素人性」に関する論考で、素人そのものの魅力というのは結局建築家になろうとトレーニングを積んでいくうちに素人っぽさが消えてしまって、だから逆に素人っぽい作品に出会うと懐かしさを感じるが、それは人間にとって基本は素人だからだ、という風なことを展開している。
 この点で、藤森の建築家としての作品は専門家の間では素人っぽいと評価されているようだ。
 ただ、たくさんの建築家とその作品が紹介されているのだが、それに関する写真や図面が添付されていないから、建築史に詳しい専門家ならばともかく、一般人にとっては具体性がなくてイメージがしにくかった。
 ところで、この第1部では見開きのうちの右側(偶数ページ)が文章、左側が図面となっていて、右ページでは藤森のこうした建築に対する論調が展開され、左ページでは藤森が設計した建築<高過庵>に関する図面が73ページにわたって紹介されていて、高過庵のできるまでがたどれるようになっている。
 もっとも、右ページの文章と左ページの図面とは直接の関連はないが、この二つのページを読み進むと藤森の思考の経路がわかって興味深かった。
 なお、高過庵については、テレビの番組で紹介されているのを見たことがあるのだが、大木の上に小さな茶室をちょこんと載せたような格好の建物で、その高さは6メートルもあり、茶室に入れば、独特の緊張感と時空が経験できるような様子だったが、なるほど、これは素人性を逆手にとって発想したような建築だとも思えたのだった。
 一方、第2部は同業者である建築家たちからの質問状とそれに対するコメントで構成されていて、第1部の藤森の論調をより具体的に補完する内容となっている。
(エクスナレッジ刊)
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