秋葉原日記 (ライブラリ)

高木のぶ子『トモスイ』

 本書の成り立ちが面白い。
 そもそもはSIA(サイア=Soaked in Asia=アジアに浸る)というプロジェクトから生まれたものだという。
 SIAとは、5年間にアジア10カ国の文学者を訪ねてその作品を日本に紹介し、作品が生まれた背景の情報を様々なメディアに発信すると同時に、著者(高木のぶ子)も触発されて短編を書くというプロジェクトのこと。
 本書はその短編集で、訪ねた国はタイ、台湾、フィリピン、マレーシア、韓国、中国、モンゴル、ベトナム、インド、インドネシア。 それぞれの国で体験したことがベースになって書かれた小説だが、まるで10の異次元に誘い込まれたような不思議な味わいがあり、手練れな小説家による物語世界はさりげなく紡がれているものの、それぞれの国々が近しく感じられるし、またある部分では既視感にとらわれるような親しみがある。
 とくに、表題作の「トモスイ」は、その名の得体の知れない魚のようなものの話なのだが、その分泌物(みたいなもの)がとてもおいしいものらしく、どういうものか一度味わってみたい、そういう気分にさせられた。何しろ、ユーモアありエロティックでもあり思わず頭を抱えさせられた面白さだった。
 また、「唐辛子姉妹」には、韓国からはるばると日本にやってくる唐辛子の話なのだが、それによると、そもそも韓国の唐辛子のルーツは日本なのだそうで、それも豊臣秀吉が韓国にもたらしたものだということだ。これは知らなかった。
 こんな話も出てきて、あっという間に読み切った10編の物語だった。
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(新潮社刊)

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