秋葉原日記 (ライブラリ)

ジョン・ハート『ラスト・チャイルド』

 著者はアメリカの人気ミステリー作家。著者の作品を読むのはこれが初めてだったが、本書は米国探偵作家クラブ賞最優秀長編賞と英国推理作家協会最優秀スリラー賞をダブル受賞したほか、年末恒例の各種ミステリーランキングでも上位だったので手に取った次第。
 しかし、本書は評判に違わず面白くて、文庫本上下2冊約700ページが一気に読めた。
 舞台はノースカロライナ州のとある都市。同州はアメリカ東南部に位置し、東海岸に面している。
 主人公はジョニーという13歳の少年。
 1年前に誘拐された双子の妹アリッサの行方を探している。
 妹の行方不明のあと父親のスペンサーも家を出て行ったし、母親のキャサリンは酒と薬におぼれる毎日で、家族は崩壊してしまった。父は尊敬の対象だったし、美人の母も家族の誰からも愛されていた。
 ジョニーには親友のジャックがいて、アリッサ探しを手伝っている。
 もう一人アリッサの行方を追っているのがいて、それは刑事のハントだった。
 ジョニーはアリッサが生きていることを信じていたし、アリッサが帰ってくれば家族が元に戻ると考えていた。
 事件はその日、学校帰りのアリッサを迎えに行くはずだった父が用事があってできなくなったことから起きていて、そのことを母からなじられて父は家を出て行ってしまったのだった。
 ジョニーは、1年経ってもアリッサを見つけてくれなかった警察も、どれほど祈っても願いを叶えてくれなかった神さえももはや誰も信じていなかった。
 ジョニーは驚くほどの粘り強さでアリッサを探していた。家の周辺の地図を片手に1軒ずつシラミをつぶすように探していた。
 ミステリーだからこれ以上のストーリーは書きにくいし、次々と訪れる山場もあって目を離せない連続ではあるのだが、本書に読者を惹きつける魅力は、まず何よりも情感豊かな文体だろう。
 南部特有の灼熱の大気が粘り着いたようなアスファルトの大地を這うようにストーリーは進んでいて、ジョニーとジャックの友情、ハントがキャサリンに寄せる感情などと微妙な葛藤も織り交ぜられているから、豊かな物語世界に浸ることができたのだった。
(東野さやか訳、ハヤカワ文庫上・下2巻)

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