秋葉原日記 (ライブラリ)

今年の5冊

 今年の読書を振り返ってみる。
 それで調べてみて愕然とした。なんと前年に比べほぼ読書量が半減したのである。理由はよくわからない。読書のスピードが落ちたことも一因だろうし、この1年何かと気ぜわしくもあった。
 そのことはともかく今年読んでおもしろかった中から5冊。
 井上ひさし『ボローニャ紀行』を読んでボローニャに行ってみたいと思わない人はいないだろう。それほどにボローニャの魅力が熱っぽく語られている。イタリア北部人口39万、日本でいえば県庁所在地ほどのサイズのこの古都には37の博物館と映画館50、劇場41、図書館73あるというから驚く。表現はやさしく、内容は示唆に富んでいる。日伊比較文化論でもある(文芸春秋刊)
 瀬川深『チューバはうたう』は、チューバ好きがチューバ賛歌を高らかに歌い上げていると同時にチューバに魅せられた人生の格闘もが描かれている。そこには、一つのことを好きになった幸せと哀しさがにじみ出ている。とにかく抑制されたユーモアがほほえましい。慈しみが全体を支えている。音楽への造詣はもちろんだが、深い教養が感じられる。(筑摩書房刊)
 丸谷才一『蝶々は誰からの手紙』は、書評の大御所による書評集。それ自体が書評文学といってよい完成度があり、毎日新聞「今週の本棚」に執筆した書評集を中心にイギリスの書評文化のことなどうんちくのある逸話もおもしろい。書評の書き方というくだりもあって「最初の三行で読む気にさせる書評をお書き下さい」などとある。(マガジンハウス刊)
 鷲田清一×永江朗『哲学個人授業』は臨床哲学専攻にして大阪大学総長の鷲田清一と、大学で哲学を学んだ経験のあるフリーライターの永江朗の対談で、キェルケゴールやサルトルなどをテキストに「極上の哲学漫談」を繰り広げていて哲学のおもしろさが伝わってくる。対談形式だから、難しい哲学講義も取っつきやすくなっている。(パジリコ刊)
 池内了『疑似科学入門』は疑似科学を超科学系、科学偽装などとその実態を例示しながらそれぞれの問題点を洗い出している。難しいのは環境問題などの複雑系で、一歩誤れば疑似科学となりかねないと指摘している。著者は著作も多い人気の科学者だが、執筆態度が真摯で内容には科学者としての良心が感じられる。また、疑似科学の問題点がよく整理されているし、疑似科学を論じながら現代の文明批評ともなっている。(岩波新書)

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