秋葉原日記 (ライブラリ)

「坂口安吾」

 ちくま日本文学全集の1巻。1991年の刊行。古書店で入手した。
 このシリーズは気に入っていて、文庫サイズとハンディだから出張などに携行するには便利だし、小さな体裁ながら編集が丁寧だし内容的にも申し分ないからこれまでにも何冊か購入している。
 それにしても、安吾の著作を読むのは何年ぶりだろうか。
 学生時代には熱心に読んでいたこともあって、書生っぽくも硬骨に、斜に構えていそうでその実、物事の本質を一直線にとらえていることに感心もしていたのだった。
 今また代表作である「日本文化私観」や「堕落論」などを読み返してみて、何十年も前に読んだ印象がそのまま残っていることにまずは驚いた。
 1942年作「日本文化私観」の中で「寺があって、後に、坊主があるのではなく、坊主があって、寺があるのだ。寺がなくとも、良寛は存在する。もし、我々に仏教が必要ならば、それは坊主が必要なので、寺が必要なのではない」とある。
 また、1946年作の「堕落論」の中では「人間は変わりはしない。ただ人間へ戻ってきたのだ。(略)戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ」とあって、いかにも学生好みの観念的な論調ではある。
 なお、巻末に付されている鶴見俊輔の解説にある、「貧せざれば鈍す」という言葉が安吾の自家製だったというのは知らなかった。なるほどこれは安吾の神髄だろう。
(筑摩書房刊)

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