秋葉原日記 (ライブラリ)

井上ひさし選「児童文学名作全集」

 古書市で見つけた。
 1987年に刊行されたもので、文庫版で全5巻。
 児童文学にはかねて興味を持っていたものの現実には読む機会は少なくて、本書を目にして迷わず手にした。井上ひさし選というのも購入の動機付けにはなった。それに、平台の隅にぽつんと置かれていて、「本好きの誰か買って下さい」訴えているようで引きずり込まれた。
 各巻には15数篇前後が収録されていて全部で82篇に及び、作品は発表年代順に配列されている。
 全5巻の目次にざっと目を通してみたが、選者井上ひさしの選考結果が大変興味深いものだったし、各巻の巻末に付されている井上の解説がおもしろかった。
 つまり、「子どものための小説と大人のための小説とのあいだに、筆者は本質的なちがいを認めない」、「物語の基本的要素は「謎」である」、「日常言語を「異様に加工したもの」が文学言語」などとあり、小説はどう読めばよいのかという問いに対しては「どう読もうが読者の自由」とも述べていて、「とにかく書かれたものはすべておもしろくなければだめなのだ。これをものを読むときの原則にしている」と展開している。
 収録されている作品の中からいくつか選んで気ままに読んでみた。
 改めて読んで新鮮にも懐かしくも感じたものもあったし、初めて読んでそのおもしろさに驚いたようなものもあった。
 夏目漱石「坊っちゃん」、志賀直哉「小僧の神様」、宮沢賢治「注文の多い料理店」、太宰治「走れメロス」などはこのような機会でもないと読み返さないものだったろうに、これは楽しいいものだった。
 中でも賢治の「グスコーブドリの伝記」などはイーハトーブという賢治ワールドが生き生きと描かれていて興味深いものだった。
(福武文庫) 

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