秋葉原日記 (ライブラリ)

小林頼子『フェルメール』

 著者は『フェルメール論』などの著作もあるわが国フェルメール研究の第一人者。
 本書冒頭で「いま、世界じゅうでフェルメールが熱い。」と書いているとおり、まことフェルメールは大変なブーム。折から東京で開かれているフェルメール展も人気。自分もフェルメール好きが高じて世界各地の美術館を訪ねて歩いているような具合。
 しかし、この人気は何なんだろうか。著者は次のように記述している。
 ・まずは、作品数が少なく、希少性が高いことが一因であろうか。何せ30数点しかない。
 ・フェルメール作品に光学画像を思わせる特徴があることも現代人の心をとらえるのかもしれない。
 ・昨今の展覧会事情もフェルメール熱を煽っていよう。
 ・しかし、こうした外的要因だけなら、フェルメール人気も一過性の麻疹で終わってしまうことだろう。かくもフェルメールが愛されるわけは、実は、作品そのものに多くを負っているということにならないか。
 ・日本人に関して言えば、西洋の、それも17世紀絵画なのに、鑑賞のために特別な神話や宗教の知識が要らないように思えることがファン層の広がりに大いに一役買っていよう。
 ・作品をじっくり眺めていると、形も、構図も、考えに考え抜かれ、何一つ変更が利かないほどに完璧につくられているのがわかってくる。こんな単純な絵なのに、どうして――。驚きの念はやがて探求の念に変わり、オリジナル作品との対面を促す。
 本書でここまでは前書き。
 このあと本論では1作品ごとに作品の様式分析を中心に詳細に論じている。取り上げた作品は全部で33。
 しかし、内容は極めて専門的で、フェルメール好きには大変参考となるが、一般の読者となるといささか退屈するかもしれない。
 ただ、全作品がカラーで紹介されているから、文庫でこれはありがたい。
(角川文庫)

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