秋葉原日記 (ライブラリ)

山路徹『命の対価』

 もう1年を過ぎたが、あの衝撃のニュース映像は今でも忘れられない。
 ジャーナリスト長井健司さんがミャンマーの民主化デモ取材中に、軍事独裁政権の凶弾に倒れてなお手にしたカメラを離さなかったシーンのこと。
 あの事件があって初めて長井さんが所属していたAPF通信社あるいは独立系ニュース通信社なるものの存在を知ったのだったが、本書は、そのAPF通信社代表が執筆したもので、独立系通信社の使命と役割が書かれているほか、長井さんに対する同僚からのレクイエムともなっている。
 APF通信社はわが国における初めての独立系通信社なそうで、著者の山路氏や長井さんらがつくったものだということである。
 この長井さん事件の時もそうだったが、独立系通信社は大手の報道機関が敬遠したがる危険と隣り合わせのような取材にも果敢に挑戦しているもののようで、目指すものは「徹底した現場からのレポート」であり、その目線は常に「民衆の位置にある」ということのようだ。
 今も気になっている、長井さんが最後まで握りしめていたあのカメラは結局どうなったのか、どのような映像が映し出されていたのか。
 結論としては、それは今に至るもわからないらしい。APF通信社が八方手を尽くしたもののどうにもならなかったという。また、この点で、日本の外務省は腰砕けでまったくあてにならなかったとも書いている。
 なお、本書は長井さんに対する鎮魂歌でもあるからある程度しようがないが、全般にちょっとセンチメンタルになっていて、ジャーナリストが書くのだからもう少し事件と自分の関係を峻別し、事件をもっと掘り下げて検証する姿勢が欲しかった。
(主婦と生活社刊)

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