秋葉原日記 (ライブラリ)

伊豆栄の鰻

 昨夜は上野公園の伊豆栄梅川亭で会食があった。
 伊豆栄は池之端が本店の鰻割烹で、創業260年の老舗。江戸時代の中頃から当地で蒲焼屋を営んでいたといい、当時の浮世絵にも描かれている。
 梅川亭は、上野公園の中にあって五重塔も見渡せてなかなかのロケーションだった。桜の木にぐるり取り囲まれているから、これが春ならばいっそう風情があるものだろうと思われた。また、座敷に掲げられていた書画は浮世絵だっがすばらしいもので、老舗の実力がうかがわれた。
 この日は懐石のコースだったが、彩りもすばらしいものだった。
 さて、メインであるその鰻だが、これは蒲焼をいただいた。
 出てきたお重を見てその大きさに驚いた。普通の鰻屋のお重の2倍はあろうかというくらいだが、これには仕掛けがあった。
 蓋を開けると普通にお重になっているのだが、このお重が銅引きで、さらにそのお重の下部に金属製の桶がはめ込まれていて、熱湯が注いである。これで気になるのが湯気だが、お重の中には和紙がかぶせてあって水滴がしたたり落ちるのを防いでいる。何とも細かい気配りなのだった。
 つまり、どこまでも熱いままで蒲焼を提供しようというわけ。
 早速いただいたが、これが絶妙の味だった。
 一般に関東の蒲焼は大ぶりでふかふかしたものが好まれるが、ここのは脂ののりもほどほど、焼き加減はやわらかすぎずかたからず、タレも甘すぎず辛過ぎずというものだった。
 一言でいえば、姿形、味ともに押しつけがましさがないと言ったら当を得ているだろうか。
 何事にも大きな顔をしたがる当世において、伝統のものだろうこれは希有な例かも知れない。

 
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