秋葉原日記 (ライブラリ)

R・D・ウィングフィールド『フロスト気質』

 イギリスの地方都市デントン市を舞台に繰り広げられるフロスト警部を主人公とする人気シリーズの4作目。
 1994年の『クリスマスのフロスト』から『フロスト日和』『夜のフロスト』とこのシリーズを楽しんできた。長編ばかりのシリーズだが、今作はさらに長くて文庫本上下2冊で約900ページと最長。翻訳はいずれも芹澤恵。
 フロスト警部とは。シリーズ1作目の訳者あとがきを少々拝借して紹介すると、よれよれのレインコートにえび茶色のマフラーがトレードマーク。きわどい駄洒落を連発し、服務規程は守らず、地道な捜査と書類仕事が大の苦手。しかし、食らいついた相手にはしつこくつきまとい、決して音を上げない。
 もう一つ付け加えると、フロスト警部が好かれるのは、まずは仕事の虫であること。ただし手柄は部下に与えて自分のものとはしようとしないこと。そして今作で滲みあがってきたのは人情味にも溢れているということ。
 捜査方法は「直感」そのもの。だから、へまもしでかすし、脇にも逸れる。それでも直感を大事にしどこまでも突き進む。
 そして、本シリーズをおもしろくしているのは、何事にも杓子定規で責任回避のマレット署長初め個性豊かなデントン署の面々が脇をしっかりと固めているからだろう。
 さて、本作だが、ゴミの山から少年の死体が発見された殺人事件を皮切りに連続幼児刺傷事件、親子4人殺害事件、15歳少女誘拐事件、謎の腐乱死体事件、そして少年誘拐事件とデントン署管内で次々と起こる事件。フロスト警部ならずとも読者としてもこんがらかる。
 いずれも難事件ばかりで、例によってフロスト警部の直感も当てにはならない。
 しかし、堂々巡りをしているようで、初めに抱いた直感が事件解決の糸口を与えていて、読者としては複雑に絡み合った事件をどのようにほぐしていくのか、そのプロセスに惹きつけられる。
 そして最後にもう一つ。不潔で風采はあがらず、不器用だがどこか憎めないフロスト警部を主人公とする本シリーズ。それは噛めば噛むほど味が出てくるスルメにも似ていて、読み出せば癖になる味と言っておこう。
(創元推理文庫)

frost%20katagi.jpg

バックナンバーへ

お勧めの書籍