秋葉原日記 (ライブラリ)

斎藤潤『吐喝喇列島』

 不覚にして吐喝喇(トカラ)列島の存在をこれまで知らなかった。
 名前からしてエキゾチックだ。ここに副題に示す「絶海の島々の豊かな暮らし」があるらしい。
 吐喝喇列島とは、鹿児島県の「屋久島と奄美大島の間南北百数十キロに連なる七つの有人島と五つの無人島からなる一つの自治体で、十島村という」らしい。
 日本で一番細長い村のようだが、この広大な海に散らばる島々に住む人々は合わせても625人だという。その各島の人口は、中之島136人を筆頭にせいぜい100人から50人程度。
 本書はこれらの島々を巡った紀行文で、著者である旅人は島旅の第一人者。
 先に『東京の島』などを読んで著者の島々にかける愛情の深さを知っていたから、今回も早速本書を手に取った次第だが、そこには吐喝喇列島が有している豊かな民俗と生活が生き生きと表現されていて楽しいものだった。
 ただ、島旅も吐喝喇列島ともなると、島を目前にしながらも波浪のため上陸することすらできなかったりとなかなか苦難の連続だったようだ。
 本書では、有人島7つ全部と、かつて有人だった1島が紹介されている。
 この中には悪石島などという名前からしておぞましいような島も出てくる。
 切り立った崖が迫り、海岸には見上げるばかりの奇岩がそびえ立って、「人を拒み黒々と横たわる島影を目にすると、島名に当てられた「悪石」の文字が妙に納得できる」とある。
 しかし、この島には温泉があり、島独自の製法による豆腐を初め充実した食事があり、来訪神ボゼなどという個性豊かな民俗までもがあって魅力が尽きないようだ。
(集英社新書)

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