秋葉原日記 (ライブラリ)

中島宏『私の履歴書 出版一代』

 産報出版は今年ちょうど創業60周年を迎えるが、著者は、その産報出版の創業者。社長会長を歴任し現在は相談役に退いているが、今年81歳となってなおすこぶるお元気である。
 産報出版は、1948(昭和23)年の創業だが、当時、著者は早稲田の理工を出たばかりで、ふとしたきっかけから溶接学会誌の編集を手伝うようになってこの世界にかかわるようになったのだという。
 『溶接ニュース』の創刊がすなわち創業だが、同時に並行して進められた日本溶接協会の創立も含めこの間のいきさつがつまびらかにされていて貴重な歴史資料ともなっている。
 創業後種々の事業を手掛けられたが、『アサヒゴルフ』や『フィッシング』『ハウスプラン』などを次々と創刊されたほか、ゴルフ事業にも進出し、全国各地にアサヒカントリークラブを開発した。
 その勢いたるや一時日の出の如きものがあって、最盛時社員数も2千人を超えたと本書にある。
 本書を読んで、事業拡大に邁進していたであろう著者壮年期の姿が彷彿とされたし、著者渾身の息づかいまでもが伝わってくるようだった。
 ただ、著者はこの間、4度も大病を患っていて、そのなかには関係者に遺書をしたためなければならなかったほどのものもあり、それが本書で「配達されなかった5通の遺書」として公開されていて、自分もその存在は初めて知るものであったが、それまでの友誼を謝するとともに、後事を託す不安が読み取れて胸に迫ってくるものがあった。
(産報出版刊)

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