秋葉原日記 (ライブラリ)

ベストエッセイ集『美女という災難』

 日本エッセイスト・クラブ編による'08年版ベストエッセイ集。
 1年の間に新聞や雑誌に掲載されたエッセイを対象に、自薦、他薦で応募された作品を日本エッセイストクラブの選考委員が選んだ54篇が掲載されている。
 表題ともなっている有馬稲子の「美女という災難」がおもしろい。
 ある雑誌の「昭和の美女」という特集に載っていた23歳頃の自分の写真を見ての感想が書かれている。
 「もうこの年になると臆面もなく言えますが、この頃の私は美女の代表のように言われていました。」が、「当時の私はこの美女というレッテルがいやでたまらなかったのです」
 というのも、美女というのはオードリー・ヘップバーンやデボラ・カーあるいは原節子のような人であり、もう一つ美女がいやだった理由がタカラヅカ出身という経歴だったのだという。
 つまり、「美女とは演技のできない奴と同義語だったのです」という。
 それから50年。「時々昔の映画を見ては……美女だったなあ……しかし下手だったなあ……しかし良い映画だ、などと思っています」と。
 巧まざるユーモアがいい。そして、落ち着いて在りし日を振り返る、そんな人生はもっといい。そう読んだ。
 もう一つ。永六輔の「妻への手紙を書きつづけて」も印象深かった。
 妻を亡くして5年。妻が亡くなってから1日も欠かさずその妻宛の手紙を毎日書いては出し続ける。自宅宛の住所を書いて。そのエピソードを読んで、妻を亡くした男の悲哀がしみじみと伝わってきたのだった。
(文藝春秋刊)

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