秋葉原日記 (ライブラリ)

八代嘉美『iPS細胞』

 昨年2007年11月21日の新聞やテレビは「ヒトの皮膚から人工万能細胞=再生医療に大きく前進」などと山中伸弥京都大学再生医科学研究所教授の発表を一斉に報道した。
 そしてこの人工万能細胞は「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」と呼ばれ、以来、頻繁にこのiPS細胞について目にし耳にするようになった。
 しかし、「大人の人間の細胞を原料に、いろいろな細胞になれる細胞をつくることができた」という歴史上の画期的出来事も、万能細胞とかiPS細胞とか単語が一人歩きしているだけで、中味をなかなか理解できないでいた。
 本書は、このiPS細胞について実に丁寧に解説している。
 著者は、現在、大学院博士課程で再生医療の基礎研究に携わっている院生。
 だから、ジャーナリストがiPS細胞とは何かということを百科事典的にコンパクトに要約したというようなわかりやすさではないが、iPS細胞とはに何かということについて誤解を招かず正しく理解してもらうことを念頭に順を踏んで丁寧に書いていて、わかりやすさを心がけている。
 つまり、iPS細胞に至るプロセスの中できちんと踏まえなければならないES細胞のこと、そのES細胞とiPS細胞との決定的違い、幹細胞のこと、再生医療とは何か、iPS細胞誕生の経緯などについて具体的に述べられている。
 それによると、山中教授らは、数万もの遺伝子の中から仮説によって24種の遺伝子に絞り込み、さらに最終的には4種の遺伝子を特定することによってiPS細胞を誕生させたというくだりなどファンタスティックですらある。
 それにしても、著者のような若い研究者が、科学の最前線を社会に向けてわかりやすく解説しようとするその姿勢は大変好感の持てるものだ。
(平凡社新書)

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