秋葉原日記 (ライブラリ)

ジェフリー・アーチャー『プリズン・ストーリーズ』

 第1作『百万ドルをとり返せ!』からもう30年以上もアーチャーの小説を愛読している。
 『大統領に知らせますか?』『ケインとアベル』などと約20作に及ぶその全作品を楽しんできた。
 『ケインとアベル』の姉妹編である『ロスノフスキ家の娘』では、アメリカ大統領選挙の行き詰まるような展開が印象的で、4年に1度、アメリカで大統領選挙が始まると、つい同書を書棚から取り出してきて読み返すのが習慣になっていて、今年などとくに同書と同様初の女性大統領誕生に期待もあっただけに思い出深いものだった。
 何しろアーチャーの作品は、ユーモアもあるし、品もあるし、ストーリーテラーによるものだから極上のエンターテイメントとして楽しめるのだった。
 そして本作もそうだが、すべて永井淳の訳になっていて、これが何とも絶妙だ。イギリス人であり、国会議員でもあった経歴を持つアーチャーは独特のレトリックが特徴だが、永井訳はその英語風の言い回しが生きている。原作と読みくらべたわけではないがそういう印象だ。
 アーチャーは、今述べたように国会議員の経歴を持ち、一時はサッチャー政権の広告塔の役割まで演じたようだが、ロンドン市長選立候補の折、偽証事件で有罪となり刑務所で2年間服役した。
 そのときの経験から生まれたのが本書で、塀の向こうで収監中同房だった者たちから取材した内容で構成されている。
 本書には12本の短編が収められているが、いずれも奇想天外なユーモアたっぷりのエピソードで綴られていて、抱腹絶倒ということではないけれど、電車の中など人前で読んでいるときには、ニヤニヤしたりクスクス笑いをこらえるには苦労する。
(新潮文庫)

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