秋葉原日記 (ライブラリ)

写真『臼杵磨崖仏大日如来像』

 豊田政男先生作品である。
 先に大阪リーガロイヤルホテルで開かれた大阪大学名誉教授豊田政男先生退職謝恩パーティーの折、会場には豊田先生が撮影された写真が100点ほど会場の壁面いっぱいに掲示されていた。
 豊田先生の写真は、雑誌に連載されて単行本にもなるほどで、大学教授の余技とは思われないハイレベルで、会場に掲示されていた写真も、全国の神社仏閣を訪ね歩いたものや、国際会議などで訪れたときのものであろう世界各地の風景、それにご専門にも関係する建築物などすばらしいものだった。
 これらの作品を拝見しているうちに1点でもいいから無性に欲しくなり、別に会場ではお好みのものをお選びくださいなどという案内はまったくなかったのだが、厚かましくも先生におねだりをしていたのだった。
 そうしたら、先生は自分の勝手な申し出を憶えておいてくださっていたようで、ひと月ほどしてこのたび宅配便で届いたのがこの写真『臼杵磨崖仏大日如来像』である。しかも立派な額装までしていただいていた。
 会場でひと通り作品を見て回っていると、自分の好みとしては京都や奈良の寺院を題材としたものが良かったように感じていたが、実は、いただけるとしてどれか1点選ぶとしたらどれがいいかと思案をしたとき、この仏様が自分に語りかけているような気がしたのだった。
 臼杵の磨崖仏は大分県の臼杵市にあり、磨崖物としては日本で最初に国宝に指定されたものとして知られる。
 約千年ほど前のものといわれ、現存するもの60体ほどあるようだが、軟質の石に彫られたものであるところから風化が激しく、この大日如来像も頭部が崩落していて、かえってそれで有名になっていたようなことだった。
 それが10数年前に修復され、この仏頭も復位したということである。
 この写真は、修復復位したあとのものだが、どっしりと福々しくもあり典雅な表情がすばらしい。また、色彩も鮮やかで、磨崖物でこれほど美しい仏様も珍しいのではないか。
 写真は、こうした表情を実に豊かに表現してくれている。しかも、磨崖という撮影困難な状況で生き生きとした作品に仕上がっていることに感動した。

usukimagaibutu.jpg

バックナンバーへ

お勧めの書籍