秋葉原日記 (ライブラリ)

畠山重篤『鉄が地球温暖化を防ぐ』

 鉄が地球温暖化を防ぐとはどういうことだろう。そういう思いで本書を手に取った。
 実は、著者自身も当初は同様だったのだという。
 ただ、著者のことはその著作を何冊も読んでいて以前から知っていたし、真摯で信頼の高いその内容を好んでもきた。
 著者は、気仙沼湾で牡蠣を養殖する漁師だが、漁場を豊かにするには、その海に注ぐ川の上流域の森を育てることが大事だとする「森は海の恋人」運動の推進者として知られる。
 著作には『森は海の恋人』『リアスの海辺から』『日本<汽水>紀行』などとあり、いずれも漁民の立場から書かれた一流のノンフィクションやエッセイである。農民文学という言葉はあるが、漁民文学とは言われるものなのかどうかはともかく、著者は紛れもなく漁民文学の書き手である。
 さて、本書だが、鉄が地球温暖化を防ぐとは、一言でいえばこういうことらしい。
 森に二酸化炭素の削減効果のあることは周知のこと。しからば海の森にも注目しようというわけ。海には植物プランクトン、海草の森が存在しているからだ。
 とくに、それらが最も繁茂する汽水域は、光合成の力を単位面積で比べると熱帯雨林に匹敵する。
 日本列島はもとより汽水域が豊富だが、それを活用して国土の1割の面積の海面に海藻を繁茂させると、日本が排出している二酸化炭素のほとんどすべてを固定化できるという。
 ただ、植物プランクトンや海藻を増やすには海が豊かであることが必要。しかし、植物は養分となる窒素やリンがいかに豊富でも、鉄がなければこれらを吸収することができず、そこで海に鉄分を供給しようというわけ。
 こうして、鉄炭ダンゴなど様々な実験が試みられ、それらがいずれも大きな効果をもたらしたことを紹介している。
 自分にはこれらの実験をトレースする能力はないが、漁師の視点から提案された内容を吟味してみる価値は充分にありそうだ。
(文藝春秋刊)

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