秋葉原日記 (ライブラリ)

布施英利『体の中の美術館』

 著者の経歴がおもしろい。
 1984年東京芸術大学美術学部卒業後、同大学院博士課程(芸術学研究領域美術解剖学専攻)修了。学術博士。東京大学医学部助手(解剖学)を経て、現在は東京芸術大学准教授(美術学部芸術学科美術解剖学研究室)となっている。
 美術解剖学などという分野があるとは知らなかった。それで医学部で実際に解剖学をやってみたというのも驚き。養老孟司に私淑しているようだからその関係かもしれない。
 人体解剖と美術との融合といったら通り一遍の言い方になってしまいわかりやすすぎるかもしれない。
 目、脳、手、足、肺、背骨、内臓、という観点から美術作品に迫っている。とてもユニークな視点だ。
 例えば足という項では、「足は、立つためにある。」と前置きして、サルからヒトへの進化、足の解剖学と論じた後、人体彫刻においては立っていなければ人体ではないと規定しつつ、彫刻家佐藤忠良の論考を引用し、仏像の立像は台に足をつけて垂直の姿勢をして立っているように見えるが、「仏像は立っていない」と指摘している。ぶら下がっているようにしか見えないというわけである。
 しかし、仏像はこの世の人間を超越した存在なのだからそれでいいのだとし、一方、人間を造形しようとしたら立っていないといけないと展開、ヨーロッパの彫刻ではロダンでもミケランジェロでもみんな「立っている」と論じている。
 示唆に富んでいるといえばそれもそうだし、おもしろい着想だといえばそれもそうだ。しかし、人体の解剖に関する部分はあまりおもしろくはなくて、美術作品に対する独特の見方がとてもおもしろかっただけに、読んでいてややこしかった。
(筑摩書房刊)

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