秋葉原日記 (ライブラリ)

豊田政男『工学者が見た文化財』

 著者から直接いただいた。
 著者は大阪大学名誉教授で、溶接力学を専門とし、大学院工学研究科長・工学部長等を歴任して今年3月定年退職された。
 本書は、建築鉄骨の専門誌「鉄構技術」に連載された随想を単行本にまとめたもので、美しい写真が特徴である。
 豊田先生とは、IIW(国際溶接学会)の年次大会でご一緒したりすると、いつも大型のカメラを構えている姿をかいま見ていて、雑誌連載中から興味深く読ませていただいてきたのだった。
 その連載も13年にわたってこうして1冊の大部な本となった。
 改めて読み返してみると、相変わらず著者のものづくりに対する熱き思いが伝わってくる。
 本書には70編が収められていて、春夏秋冬に分類されている。
 神社仏閣に関することが圧倒的に多く、実際、奈良の地に住んでいるということばかりではなく、この方面の文化財への造詣は深いようで、写真も文章も随分と掘り下げられたものが多くて、単なる工学者の余技とは思えないほどだ。
 この中から一編を紹介しよう。例えば、冬の章に収められている「一時一所」という編では、南禅寺に遊ぶと副題があって、見上げるような山門をはじめ方丈などの写真が添えられているが、朝日の差し込む法堂の写真など、開門一番に登ったという冬の京の早朝の凛とした一瞬が切り取られていて、極めて詩的な余韻を味わせてくれる。
(アドスリー刊)

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