秋葉原日記 (ライブラリ)

石田千『踏切みやげ』

 本書帯に、鉄道ファン・踏切ファン必読!とあったから手にとってみた。
 それにしても変わった趣味があるもので、鉄道ファンはともかく、踏切ファンというのはこれまで聞いたこともない。自分も鉄道好きだが、踏切にまでは思いも及ばなかった。
 毎月1回月半ば(これは連載原稿執筆のためらしい)、路線を選んでぶらり鉄道に乗りに出掛け、思いついたところで下車し踏切を探す。こんな旅が描かれている。
 踏切を見つけると、じっくりと観察しているようだ。それが実に詳細で具体的だ。
 例えば、「踏切ばなれ 金杉(常磐線)」というくだりには、「西口から北口にむかって、線路ぞいの道をのぼっていく。歩いているだけで汗の流れる、重たい暑さでも、いらだたない。ひろびろとした谷中墓地の、木陰のおかげだった」(中略)、「店のとだえたところが、金杉踏切だった。常磐線0K276M10・1M、大また十二歩。あたまのうえに、京成線の高架橋がななめに渡っている」(中略)、「両がわから降りてくる、しましま棒の一本が、ずいぶん遅れる。そろいの振りつけを忘れてしまって、開きなおった踊り子さんのように、堂々と降りてくる」などとある。
 以下このような文章で38編が綴られている。各編には冒頭題目に歌が添えられ(大半が字余り)、ときに写真やイラストも載せてある。
ただ、読んでいて違和感がつきまとって離れなかった。
 つまり、まず、漢字が極端に少ないのである。「熱がきゅうにさがったぶん」などとあってこうも少ないのもいかがなものか。
 また、「うとうとした南口の」とか、「冷蔵庫のあおあおしたにおい」などと独特の表現があって、これが最近の若い女性(といっても40歳らしいが)の流行りの文章なのだろうか、やさしそうに見えてその実癖が強くて読んでいてふと立ち止まることが多く滑らかさを欠いた。
(平凡社刊)

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