秋葉原日記 (ライブラリ)

『大橋巨泉の超シロウト的美術鑑賞ノート』

 普段ならタレント本などに手を出すことは滅多にないのだが、何でも知ったかぶりをする巨泉があえて超シロウト的とへりくだったタイトルが気になって手に取った。
 実際、本書まえがきで巨泉は、野球、俳句、麻雀、ゴルフ、競馬等々あらゆるものに手を染めたが「美術と名のつくものとは無関係だった」といい、パリに行ってもルーブル美術館などまったく興味を示さなかったのだという。
 その巨泉が、1999年、スペインのプラド美術館を訪ねて以来西洋美術の虜になったのだといい、そのきっかけは「ある絵がボクを呼ぶことに気がついた」のだといいう。
 そして、ここからがいかにも巨泉らしいのだが、「それからほとんど毎年欧米に出掛けては世界の美術館で名画を見て歩いている」し、「凝る性格なので西洋美術の本を読みまくった」と述べている。
 本書を読んで、「おぬしなかなかやるな」というのが第一印象。
 自分も絵画鑑賞は好きで、それこそ随分と海外の美術館も訪ね歩いているが、巨泉の含蓄はすごい。かなり勉強したことは歴然としている。すでに素人の域を出ている。
 シロウト的とあらかじめ断っているから書きやすかったのだろうが、なかなか視点がユニークだし、それも誰はばかることなくずばり切り込んでいるところがいい。これは専門家ではなかなかやりにくいところだろう。
 例えば、日本でもファンの多いブリューゲルについて、巨泉はフランドル・ルネサンスを確立したと位置づけた上で、「雪中の狩人」にしろ「農民の婚礼」にしろ、農民の温かな生活を描きながら、その作中の人物は一人として笑ってはいないと指摘している。
 これはなかなか鋭い観察で、巨泉はブリューゲルが好きらしく、「雪中の狩人」は5回も見たとじっくりとした鑑賞態度も示しているのだが、何かを示唆しているのだろうが誰も笑わない理由はわからないと率直に語っていて、「もっと象徴的な意味を勉強しないと読み解けない」とも述べていて、上っ面だけの鑑賞をいさめてもいるようだ。
(ダイヤモンド社刊)

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