秋葉原日記 (ライブラリ)

至福の旅

 ゴールデンウィーク。どこか旅にでも出たいと思いつつも、どこに向かっても混んでいるこの日本列島。
 いっそごろごろして日ごろの疲れでもいやそうかという、そんな時にこそ机上の旅に出てみよう。これは、生まれ故郷を一歩も出なかったというカントの如き趣があり、これこそ至福の旅といえよう。
 用意するものは3点。鉄道時刻表と地図帳そして理科年表。地図帳はともかく、時刻表も理科年表も数字の羅列だけで、およそ読書の対象にはなりにくいものだが、これが読んでみるとなかなかおもしろく、寝食を忘れてしまいかねない。
 さて、今日はどこに向かおうか。都会の喧騒を逃れて北の最果てはどうだろうか。
 上野駅13番線。すでに寝台特急カシオペア号が入線している。12両編成。最後尾1号車はカシオペアスイートで、2号車がカシオペアデラックス、3号車食堂車、先頭はラウンジカー。4号車から11号車までの8両の寝台車は全車2階建て車両。何と豪華な編成か。
 定刻16時20分、鋭い汽笛が鳴って列車は静かに滑り出すように発車した。
 窓外が暮れなずんだ18時30分頃、黒磯を通過するあたりで食堂車に出向く。ディナーを予約しておいたのだ。7800円と値は張るがここは奮発してフランス料理のコースを注文してある。
 個室に戻ってまどろんでいるうちに函館5時01分着。
 ここからはもう眠れない。地図を読みながら北海道の地形をなぞる。右窓には噴火湾が続く。
 札幌9時32分着。次の列車まではたっぷり時間があり、ラーメン横町まで足を伸ばし、本場の札幌ラーメンを堪能し腹ごしらえを済ます。
 札幌12時37分発特急サロベツ号に乗車。石狩平野をどこまでも進む。雄大な北海道の景色が広がる。
 16時07分音威子府を過ぎて、駅名にも北海道らしさを感じる。
 幌延を出たありから左窓にサロベツ原野が荒涼とした風景を見せる。さらにその先には利尻富士が遠望される。
 熊笹を風の渡っているのが窓外に見て取れる。思わず肌寒さを感じて理科年表を調べてみたら、このあたりの4月の平均気温は4.2度とある。桜は影も見えないし、まだまだ春は遠いようだ。
 18時11分稚内着。日本最北端の駅である。

shifukunotabi.jpg
(机上の旅必携3冊)

バックナンバーへ

お勧めの書籍