秋葉原日記 (ライブラリ)

『没後50年 松本竣介』

 1998年から99年にかけて練馬区立美術館、岩手県民会館、愛知県美術館と巡回された「没後50年松本竣介展」の図録である。
 約10年前の刊行だが先週のこと東京駅八重洲地下街の古書店で見つけた。
 松本竣介が好きで、全国に散らばっている作品を各地の美術館に訪ね歩いているし、企画展も神奈川近美でのものなど随分と見てきているが、この展覧会は残念ながら見落としていて、図録も持っていなかったからこのたびの入手は僥倖だった。
 竣介は、盛岡中学時代に難聴となったことから画家を志し、上京して中学同窓の船越保武らの交友を得ながら切磋琢磨していったのだったが、本書には竣介が画家を確立した1935年から36歳という若さで没する1948年までの作品油彩92点、素描45点が掲載されていて、竣介の代表作が一通り網羅されているし、その作品世界の全体像が把握できるものとなっている。
 本書をひもときながら、竣介の魅力とは何だろうかと改めて考えた。
 静謐な知性ということもあげられる。
 それも、「Y市の橋」(1942年)に代表されるように叙情的な清新さも感じられるのである。
 また、「街」(1938年)は、竣介の青が印象的で、ある種のモンタージュ手法を用いたと言えそうな、油彩に線を重ね描いた風景は、理知的で透明性も感じられるのである。
 いずれにしても、竣介の画業の大半は戦時下に重なるもので、そのような中でこのように自己を貫き通したということは驚嘆するほかはない。
 ところで、本書を見つけたこの店は、新刊古書や図録など美術書の在庫が比較的豊富で、以前にも萬鐵五郎の図録を購入したことがある。

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(松本竣介「Y市の橋」=同書から引用)
 

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