秋葉原日記 (ライブラリ)

横尾忠則『隠居宣言』

 天才横尾忠則が、古希を迎えたことを契機にグラフィックデザイナーを廃業し「隠居宣言」をしたという。
 本書では、その動機、経緯、隠居生活の中味などが書かれている。内容は、編集者が用意した108の質問に答える形で進められている。
 まず、隠居宣言のきっかけ。70歳を迎えて老人という意識が強まったという横尾は、「老人になった以上、老人に抵抗するのではなくむしろ老人であることを自らに歓迎した生き方、つまり自分の限界を知ることが老人になった悩みを解決してくれるような気がしたのである。そこで僕は思いきって「隠居宣言」をすることにした。」のだという。
 そして、わざわざ宣言をしたについては、「ある程度公にして後に引けない状態に自分を置くこと」だったといい、宣言したことによって、「対人関係の整理も自然にできつつあって」、雑縁から解放されたのだという。
 で、隠居生活はというと、「隠居の思想の中核になるのは「遊び」ではないかと思う。それと規則正しい生活の重視」といい、肩の力を抜いた生き方が人生をより楽しく、より創造的にすると述べていて、子供の頃からの夢だった絵画を描き、写真を撮り、旅をし、温泉を訪ね、そしてこの頃では小説の執筆を楽しむ生活らしく、何ともうらやまし限りだ。
 自分も、今日明日ということではまだないが、そろそろ隠居を視野に入れてもおかしくない年代となりつつあるが、本書を読むと明日にも引退したくなってきた。
 本書は示唆に富んでいるし、読みやすくわかりやすい。
 横尾は、隠居生活に入るのが10年遅れた、もっと早く入りたかった、とも述べていて、自分もせかされているようで困った。
(平凡社新書)

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