秋葉原日記 (ライブラリ)

春の房総半島横断

 先週末土曜日22日は房総半島横断鉄道の旅に出かけた。小湊鐵道といすみ鉄道を経由して内房から外房へと抜けようというもの。
 まず、京葉線、内房線と乗り継ぎ五井から小湊鐵道に乗った。
 五井駅で小湊鐵道線ホームは、JR線ホームの隣に並んで小さく間借りするようにあった。
 ホームには、すでに2両のディーゼルカーが入線しアイドリングしていた。それにしても相当にくたびれた車両で、銘板には「キハ208 昭和45年日本車輌」とあったから、もう38年も前の車両ということになる。
 列車は、ブォーンと軽く警笛を鳴らし定刻の9時22分を2分ほど遅れて発車した。
 車内は土曜朝の下り列車にもかかわらずほぼ満席で、ハイキング客が多いようだった。
 しばらく市原市内の単調な田園風景の中を走っていた列車は、上総牛久を過ぎたあたりから山に分け入るように進み、養老渓谷に至って乗客の7割ほどが降り車内はだいぶ空いた。ここからハイキングコースが延びているのだ。次の上総中野が終点で、10時31分着。
 この上総中野は、いすみ鉄道との接続駅で、小さな無人の駅舎と二つのホームが並んでいる。
 駅舎側が小湊鐵道のホームで、その隣がいすみ鉄道のホームとなっている。構内で二つの線路が連絡できるようになっているのが見て取れたが、この二つの路線がこれまでに相互に直通運転されたことはない。
 待つほどもなくいすみ鉄道の列車が到着した。すぐに折り返しとなるが、降りた乗客もあらためて乗った人も多くて、山中のローカル駅とは思われない陽春らしいにぎわいだ。
 自分は五井駅で購入した「房総半島横断記念乗車券」(1600円)というものを持っていて、小湊鐵道五井駅からいすみ鉄道大原駅まで通しで乗り降り自由の1日乗車券だ。ただ、この切符はおもしろくて、後戻りができない片道乗車券となっている。
 いすみ鉄道の列車は、ディーゼルカーワンマン運転のレールバスで、車体をふるわせながら定刻10時41分発車した。
 この列車は黄色い塗装が施されたきれいな車体をしていて、「菜の花列車」の愛称が付けられている。
 上総中野を出てまもなく線路の両側に列車の愛称そのままに菜の花の咲いているのが見られた。それが延々と続いていて、まるで真っ黄色に敷かれた絨毯の上を走っているようだ。沿線に花のきれいな路線は全国にあまたあるが、これほど見事な花の車窓風景も少ない。
 途中、沿線随一の町大多喜で下車した。ここは徳川四天王の一人本田忠勝を初代城主とする城下町で、街をぶらぶらと散策した。ただ、困ったのは、昼食をとろうとしたのだが、駅周辺には食堂らしきものが1軒もなく、コンビニすら見あたらない。駅前の雑貨屋をのぞいたのだが、ここでもおにぎりもパンもおいていなくて、あきらめて次の列車に乗り継いだ。
 菜の花の絨毯はますます見事さを増し、車窓左右には木蓮や椿、梅、早咲きの桜などが広がって12時05分大原着。
 ところで、小湊鐵道といすみ鉄道には両線に共通した歴史がある。つまり、両社ともに路線計画を途中で断念して今日に至っているのである。
 小湊鐵道は、ローカル私鉄の典型みたいなものだが、当初はその社名の通り五井から安房小湊をめざし計画されたものだし、第3セクターいすみ鉄道も旧国鉄時代は木原線と称していたように当初は木更津から大原に至る路線として計画されたものだが、両線ともに上総中野で建設は中断され、両線が合流して半島横断線を形成するに至っているのである。なお、木原線の木更津側は現在の久留里線上総亀山が終点である。
 大原でやっと昼食にありついた後、東金線などを経由して家路についたが、首都圏近郊にこれほど美しい路線のあることもうれしいことで、この日は結局5社14路線を乗り継いで鉄道の旅を堪能したのだった。

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(上総中野駅。右が小湊鐵道、左がいすみ鉄道)
     

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