秋葉原日記 (ライブラリ)

トルーマン・カポーティ著+村上春樹訳『ティファニーで朝食を』

 映画とは随分あちこちとストーリーも第一印象も違うのだなというのがまずは率直な感想。
 しかし、映画との比較ばかりしていくと、映画のための原作ということになってしまって、結局、映画に引っ張られていくからそれはやめにするが、それでも、オードリー・ヘップバーンの顔がつきまとってどうしようもなかった。
 14歳で南部の田舎から家出をしてニューヨークに出てきたホリー・ゴライトリーが主人公。現在20歳。この間磨きをかけて今や新進女優にして社交界で名前を知られる存在。
 このホリーが何とも奔放。ポンポンポンポンはじき出される言葉が小気味よい。時に、汚い言葉が出たり、性的開放性があったりもするが、身勝手なことをまくし立てているようで、しかし、苦笑いもさせるおもしろさがある。鹿爪らしいことを言いたがる紳士よりはよほど哲学的だ。
 相手役にして語り手の「僕」は、これも田舎出の小説家志望。これが屈折の多い男で、ホリーに惚れぬくということができなく、かといって生涯忘れることもできないでいるという具合。
 第2次大戦下のニューヨーク、したたかに生きてきたはずのホリー。愛する兄フレッドが戦地で死に、ブラジルの大富豪外交官との結婚話がご破算となり、一緒に暮らしてきた猫までも捨てて旅に出るホリー。
 その後のホリーは、消息も途絶えてしまっているが、新天地は見つけたのだろうか。ラストは哀感につつまれている。
 原作を英語で読むほどの語学力は自分にはないが、村上春樹の翻訳がすばらしい。小説としておもしろい。読み終わってすぐにもう一度じっくりと読み返したくなったほどだ。
 その翻訳者村上春樹の巻末解説がいい。この中でもう一度映画化するとして、ホリー・ゴライトリー役を誰にさせるかと問うているのだ。
 著者カポーティは、映画化の際、ヘップバーンは似合わないとして不快感を示していたというが、さて、自分なら誰を指名するだろうか。
 随分と洋画は見てきていて、好きな女優も多いのだが、これがなかなか思い浮かばない。強いて言えば、オリビア・ハッセイか。純情派のイメージが強いが、コケットリーな役にもいいのではないかと思う。もちろん、『ロミオとジュリエット』当時のオリビアということだが。
(新潮社刊)

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