秋葉原日記 (ライブラリ)

かんだやぶそば

 言わずと知れた名店である。1880年(明治13年)創業で、藪系の総本家と言われる存在である。
 板塀に囲まれ、前庭中庭を配したたたずまいは、名だたる老舗が軒を並べる神田須田町淡路町界隈の中でも風格が漂い、神田の情緒を醸し出している。
 店内に入ればよく磨き込まれた調度が迎えてくれる。
 そして、若女将が帳場から板場へ注文を通す、あの甲高く透き通って語尾の伸びた独特の節回しが心地よい。
 そばは、青みがかって細くたおやかだが、これはそばもやしの青汁を打ち込んだものだからだという。つゆはあくまでも東京風で濃く辛い。
 一般に盛りそばと言われる「せいろうそば」は、さらっと盛りつけてあるだけで、それこそ三口もすれば食べ終わる程度の分量で、量的にはあきれて腹が立つほど物足りない。
 この店で好きなのは天ぷらそばで、かき揚げが絶品だ。芝エビを小さな握り拳大に揚げたものだが、形といい揚げ加減といい、どのようにしてあげたものかと板場をのぞきたくなるほどの見事さだ。
 店は落ち着いていて風情もあるし、客をおもてなしするなどにはうってつけだが、値段も高いし(天ぷらそばが1800円)、昼時に一人ぶっらと入るといったような店ではない。
 なお、昨日5日の昼食に社員と一緒に行ったのだが、庭先に咲いていた紅梅が見事だった。

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(秋葉原風景21=かんだやぶそば)

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