秋葉原日記 (ライブラリ)

小林誠『中国で売る!』

 本書は著者の小林さんから直接ご恵贈いただいた。
 小林さんは、パナソニック溶接機の中国合弁企業である唐山松下産業機器の初代総経理から現在は中国唐山市日本事務所長の要職にある。
 唐山松下については、設立準備から手掛け、今日では自動溶接機分野で60%のシェアを有する優良企業にまで築き上げた。松下にとっても唐山松下は海外進出企業の代表的成功例の一つと言われる。
 また、唐山市日本事務所長としては、松下を先駆けとして数々の企業誘致に成功し、唐山市高新技術開発区の発展に貢献してきた。とくにここでは、溶接関連分野として松下に続いて神戸製鋼や小池酸素工業も誘致していて、今や中国における溶接関連産業の一大生産拠点に成長しているし、地元大学には溶接工学科を設立するなどの活躍を見せている。
 こうした中国発展への貢献が評価され、2007年中国政府から外国人としては最高の栄誉である「国家友誼賞」を受賞している。
 小林さんとは、中国溶接事情の取材でたびたびお世話になっている間柄で、唐山松下進出の苦労話など様々に伺ったが、穏和なお人柄のどこから出てくるのかと思われるほどのエネルギーの持ち主で、なかでも、中国における溶接技術の発展に対する情熱は大きいものだった。
 その小林さんの著作である。届いたその日のうちに早速拝読した。
 本書では、設立から手掛けた唐山松下と、日本から進出したもののうまくいっていなかった企業の再建と、二つの事例が詳細に紹介されている。
 つまり、「中国で事業展開したいがどうしたらよいか」と、「中国に進出してみたがうまくいかないがどうしたらよいか」との二つの問いに対する答えを開示しているのである。
 これが何とも副題の「進出企業の経営ノウハウ」にあるとおり、自分で実践してきた具体例を開陳していてびっしりとノウハウが詰め込まれている。
 エンジニアらしく問題点がきちんと整理されているし、これはもう中国進出企業のみならず、どの企業にもあてはまる経営の優良手引き書であろう。
 それと、これは失礼な言い方になるが、小林さんは経営者であって決して文筆家ではなかったと思っていたが、本書の文章はリズムもよくて読みやすい。普段はビジネス書にはあまり手を出さない方だが、本書はおもしろくてA5判320ページを一気に読破した。
(蒼蒼社刊)

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