秋葉原日記 (ライブラリ)

村田喜代子『八つの小鍋』

 副題に「村田喜代子傑作短編集」とある。
 なかなか魅力的な作品が並んだ。元来が寡作だし、これで村田喜代子の世界が堪能できる。
 収録作品には、「鍋の中」(芥川賞受賞作)、「百のトイレ」(女流文学賞受賞)、「真夜中の自転車」(平林たい子賞受賞)、「蟹女」(紫式部文学賞受賞)、「望潮」(川端康成文学賞受賞)などが含まれていて、長編をのぞいて代表作が網羅されていると言えるのではないか。
 村田は、北九州に生まれ在住している作家で、作品も地元に題材を取ったものが少なくない。ちょっと怖い話も出てきて、古くからの言い伝えが現代に生きているような物語が得意なようだ。
 また、これは、本書解説欄で池内紀がいみじくも指摘しているように、村田作品にはおばあさんがよく出てくる。それが時に酷薄である場合もある。
 こうしてみると、土着性が強いようにも感じるが、内容的には現代の日常を丁寧に描いていて、表現は柔らかいしユーモアもあって読みやすい。
 かえって、さらっと物語が進むから、作者の深い部分に気がつかないで読み飛ばしてしまうおそれがある。
 収録されている8篇中6篇はかつて読んだことがあったが、このたび全部を読み返してみて、いずれもやはり味わい深かった。短編のなのだが、中編長編に相当する重たさを感じた。
 現在日本を代表する女性作家の一人だが、とにかく文章の力というものを感じさせる作品ばかりだ。
(文春文庫)

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