秋葉原日記 (ライブラリ)

映画『母べえ』(山田洋次監督)

 山田洋次監督、吉永小百合主演、映画『母べえ』を封切り初日の26日土曜日、近所の映画館で観た。
 昭和15年、戦時色の強まる東京が舞台。母を「母べえ」(かあべえ)、父を「父べえ」(とうべえ)、娘たちも「初べえ」、「照べえ」と呼び合う家族がいた。
 家族揃って小さなちゃぶ台で食事を取り、川の字になって寝る、そんな小さな家庭の平和が突然破られる。
 独文学者の父べえが、戦争に反対し国策を批判したとして治安維持法違反で検挙され投獄される。
 獄中の父べえと家族の間では手紙がやりとりされ絆が保たれている。
 しかし、やがて支那事変から太平洋戦争へと戦火は拡大するなか、転向を拒否する父べえは獄中死する。
 この間、母べえが父べえを励まし、娘たちを育み、そして家族を貧しくも明るく前向きに支えていく。
 主題は古典的だし、モチーフにも目新しいものはない。
 しかし、母の優しさと強さを吉永が好演している。また、重要なモチーフとなっている手紙のやりとりが、この家族の情感をいっそう豊かなものとしている。
 『たそがれ清兵衛』から『武士の一分』と続いて、このところの山田の作品は、理不尽さに抗する人間の尊厳を家族の目線から描いてきているように受け止められる。
 とにかく山田の演出は相変わらず涙をいっぱい流させる。

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(『母べえ』公式サイトから引用) 

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