2016/06/07

演劇『残花』

 作・演出詩森ろば(風琴工房)。杉並区高円寺の座・高円寺で先週公演されていた。
 副題に-1945 さくら隊 園井恵子-とあり、園井恵子の短かった演劇人生が描かれていた。
 園井恵子は、1913年生まれ岩手県出身。宝塚を経て映画そして演劇に転じた。また、さくら隊は、戦時中、国策によって設けられた移動劇団の一つ。園井はこのさくら隊で演劇を続けた。さくら隊は移動中の広島で被爆した。1945年8月6日のその日は園井の32歳の誕生日だった。園井は即死ではなかったが、避難先の神戸で8月21日原爆症により死去した。
 舞台は、さくら隊が稽古場を求めて園井のつてを頼って岩手県つなぎ温泉に赴いたところから始まる。演目は『獅子』で、さくら隊はこの先この演目を持って主に中国地方を移動する。
 戦況の悪化が著しく、団員たちは疎開先を探していた。そうこうしてその日を迎える。広島にいたもの、東京などへ出かけていたもの、明暗が分かれ過酷な運命となった。
 劇場は200席ほどか。舞台は大きくはない。私の席は最前列中央で、舞台の高さはせいぜい30センチほどだから、座った目線で舞台全体が目の当たりにできた。
 詩森の演出はシンプルだが丁寧。園井には広島への危険の予感でもあったのか、しきりに広島行きを躊躇していた。
 園井を演じたのは林田麻里。ほかに福本伸一などが登場し総勢11人。林田の園井恵子は演劇に情熱を燃やす若い女優を演じて熱演だった。
 舞台の装飾は極めて簡素。道具類も木製の天板に金属の脚がついいたテーブルと椅子だけで、幕の転換もこれら道具の移動だけで済ませていた。だから、幕間もなく2時間30分通しの舞台となっていた。
 しかし、これがまったくあきさせない。その時が来るだろうことは幕が開く前からわかって想像はしていたことだが、果たしてどのような設定であり演出であるのだろうかという興味があってクライマックスに注目していた。
 そうすると、舞台では出演者が一人ひとり「カチ カチ カチ カチ」と唱えていく。この緊張感。これはなかなか演出の妙だと思った。
 舞台が終わって、出演者は一列になって挨拶していたが、中央にいた林田麻里は感極まったのか涙を流していた。

 


(写真は「残花」のパンフレットから引用した)

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