2016/06/01

芦原すなお『猫とアリス』

 『雪のマズルカ』に続く女私立探偵笹野里子シリーズの第2弾。
 警察小説全盛の今日、探偵小説それも女探偵というのは極めて異色。
 しかし、この女探偵がすこぶる痛快。まずは設定がいい。夫がやっていた笹野探偵事務所をその死後受け継いだのだが、そのためにジムに通って総合格闘技を修得したりしてそこそこ強い。度胸がいいし大胆で勘もいいというキャラクターが魅力。
 短編5編の連作で、準主役で登場するのが青蛇。両腕から肩、胸にかけて青いタトゥーがあるのでこの名で呼ばれている。「無間奈落」で詳しく登場してくるが、目は蛇のように冷たくぞっとするし、大胆な行動、躊躇のない殺害方法などが特徴で、母を死に追いやった保守党政治家に復讐を果たす。
 さらに、前作から引き続き常連として登場するのは、同業者で山浦探偵事務所の山浦歩、通称ふーちゃんと、警視庁捜査一課の遠藤警部。二人とも里子にとっては数少ない親しい協力者である。
 「猫とアリス」ではフーちゃんとのなれそめが語られるが、頼りなげだが文学素養もあり裏情報に詳しい。
 また、遠藤警部は男やもめで里子に惚れており、その弱みで里子に捜査情報を引き出されてします。
 ほかに、ジムのオーナー兼トレーナーであるジェイソンなどと個性豊かな人物が登場するが、いずれも感心するのはその人物造型の確かさ。まるで履歴書を閲覧しているような詳細ぶりで、物語の背景もじっくりと描き込まれているから理解が進む。
 それと面白いのは里子を中心とする登場人物たちの会話で、これがいかにもハードボイルドらしくしゃれていて楽しみ。
(創元社推理文庫)


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