2016/05/27

安東能明「伴連れ」

 足立区の綾瀬署が舞台。
 登場人物は、署長の坂元真紀、副署長の助川、刑事課長の浅井、警務課課長代理の柴崎、刑事課巡査の高野朋美ら。このうち主役級が柴崎と高野。警務課は一般の会社でいえば総務課みたいなもので、雑多な案件を抱えるが、柴崎は刑事の経験はない。高野は盗犯第二係所属で26歳。鼻っ柱の強い女性刑事だ。
 本書は短編5編で構成されている。巻頭の「掏られた刑事」は高野が警察手帳を掏られた話。警察手帳を紛失するなど警察官にとってあるまじき行為で、しかも掏られたなどは懲罰の対象になる。しかも新聞記者にまで知れ渡っていて厄介。
 高野から経緯を聴取した柴崎は、高野の帰宅経路など実地検証を行ってみる。高野は、北綾瀬から千代田線に乗り北千住で日比谷線の乗り換え、秋葉原で買い物をした後岩本町から都営新宿線で大島へと向かうルートを同じ時間帯に乗ってみる。
 調べていくうちに気になる場面に遭遇する。日比谷線秋葉原駅の改札口で中年女性が駅員にパスモの残高が少なくなっているといって問いただしていたのである。このことがヒントになって柴崎は事件の解明に至るのだが、このどんでん返しが鮮やか。
 このように、収録されている5編はいずれも柴崎がちょっとしたヒントから事件を解明していく話で、刑事でもない柴崎が高野の協力、あるいは高野に協力していく姿が描かれている。
 この作家の作品は初めてだったが、警察小説全盛の今日、新しい作家が次々と登場してきていて、しばらくはその傾向が続くようだ。もっともこのトレンドは日本に限らず世界的なもののようだが。
(新潮文庫)
 


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