2016/05/09

若冲展

 東京都美術館で開催されている。おまえもか、と言われそうだが、出かけてきた。とにかく大変な人気ぶりで、連休中だったせいもあって入館には長い列ができていた。9時半の開場に対し1時間前には着いていたのだが、それでも約1時間も並ばされた。
 若冲の生誕300年記念ということで、若冲の代表作が揃っているようだった。内外各地の美術館やコレクターが協力していて、若冲の作品は日頃見ることが少ないから貴重な機会だった。
 目当ての一つは釈迦三尊像3幅+動植綵絵30幅。これらは相国寺に揃って寄進されたことが知られているが、今回の展覧会ではこれらすべてが大ホールに一堂に展示されていて圧巻だった。これらが揃って展示されることはまれらしい。
 中央に釈迦三尊像が配置され、その左右に動植綵絵が控えていた。
 三尊像は真ん中が釈迦如来像で、左に普賢菩薩像、右に文殊菩薩像。豊かな色彩の三尊像で、お顔は三尊像ともにやわらかい表情で、人間くさく仏様らしくない。このことがまずは興味深かった。
 三尊像の左右に15幅ずつ楕円に配された動植綵絵。動物や鳥、魚、花などが色とりどりに描かれているのでこの名があるのだろうが、順に見ていくと目がくらむようだった。とにかく極彩色の世界である。それも緻密。この画家は観察が得意だったのだろうと思われるが、細部に至るまで余すところなく描かれている。象や虎など日本では見ることのできない動物も描かれていて、そういうものは中国や朝鮮からもたらされた絵画から想像をふくらませたものであろうか。
 30幅を一通り見てもう一度丹念に見て回った。それで色彩の多彩さと観察の鋭さからすごいと感じたのは群鶏図だった。たくさんの鶏が描かれているのだが、一羽ずつのきめ細かさには感嘆した。また、好きなもの1幅をあげると老松白鳳図であろうか。色の多彩さではなく、白鳳はほぼ白一色で描かれているのだが、それがどのような技巧を凝らしたものか、実に色彩が豊かなのだった。
 このたびの展覧会で楽しみにしていたものの一つは鳥獣花木図屏風。確かアメリカ人のコレクターの手に渡っていてなかなか見る機会は少ない。
 六局一双の屏風絵で、色彩が明るく豊かでとても華やか。1センチ角くらいの大きさの升目を展開したようなもので、実に緻密で膨大。左隻に鯨、右隻に象が描き込まれている。美しさばかりか、その仕事ぶりも想像すると呆然とするほどだ。おそらく若冲の傑作中の傑作であろう。
 なお、若冲の作品についてはこれまで雑誌やテレビなどで見ることたびたびで、江戸中期の画家伊藤若冲(1716‐1800)についても澤田瞳子著『若冲』を読んでいてその人となりや画業についてもある程度の知識はあったつもりだったが、今回初めて実際に若冲の作品を目の当たりにして、なるほどこれは「奇想の画家」だと再認識した次第だった。
 最後に蛇足だが、正直に書くと、とにかく若冲の作品に接して驚嘆したことは事実だが、見て回っているうちに疲れのようなものを覚えるようになっていたし、終いには飽きてもきていた。はなはだ率直だが。


写真1 鳥獣花木図屏風(これは右隻=会場で販売されていた絵はがきから引用)

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