2016/04/13

新構造材料の研究開発

 溶接学会の春季全国大会が昨日12日から3日間の日程で開催されている。会場は国際ウエルディングショーが開催されるインテックス大阪に隣接したATC(アジア太平洋トレードセンター)。
 大会初日の昨日は午後1時から特別講演会が行われ、岸輝雄東大名誉教授(ISMA=新構造材料技術研究組合理事長)が「新構造材料研究開発について」と題し1時間にわたって講演した。会場は、満員の聴講者ではち切れんばかりの盛況ぶりだった。
 講演の冒頭で岸教授は、日本では材料がらみの国家プロジェクトが現在三つパラレルに同時進行しているが、このうち私は二つに関係していて、一つは経産省が所管するISMA/NEDOプロジェクトであり、二つには内閣府・文科省所管のSIP/JSTプロジェクトである。
 本日は、私からは日本の科学技術の状況について話して参りたい。
 日本の科学技術に対する海外の関心は非常に高いが、日本企業の製造拠点がどんどん海外へ向かっているところから、日本としては国の研究力を高めると、それは必然的に技術の流出へとつながってしまい、ある種の隘路に建たされてる。
 しかし、日本はさらにその先へ進む必要があり、そのためにハーバードやケンブリッジに匹敵する大学を育成するために四つの大学を指定研究大学に設定しているし、また、国研についても産総研や物材研など三カ所を指定しているところだ。
 革新のない科学技術は死滅することは自明の理だが、ただし、既存の技術の組み合わせからも革新が生まれることは重要で、私はこのことがオープンイノベーションだと思っているし、とくに材料の革新こそがイノベーションの原動力だと考えている。
 ここで大きな役割として期待されるのが、マテリアルズ・イノベーション(MI)で、これは材料計算科学だ。現状、日本の材料研究のアクティビティはピークに達し、低下に向かおうとしている。この状況を打破するためにもMIへの期待は大きい。
 マルチマテリアル化もその一つの方向で、これによって自動車では40%の軽量化をターゲットにしている。具体的には、超鉄鋼材料で1.5ギガパスカル、伸び20%の実現を目指しているし、アルミの750メガパスカルやマグネシウム合金なども研究の対象で、マルチマテリアル化のにおける接合としてはFSWに期待するところが大きい。
 これらはISMAプロジェクトについてだが、SIPプロジェクトについてもちょっと触れておくと、これは戦略的イノベーションが目標で、耐熱合金が対象だし、TiAlといった金属間化合物も念頭にある。
 講演は、日本の科学技術の現状と材料の方向についてやさしい解説となっており、日本の科学技術をリードする岸教授の講演とあって説得力もあり極めて印象深いものだった。


写真1 満員の聴講者を集めて行われた特別講演会の模様。

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