2016/03/23

飯田線を1本で乗り通す!(その2)

 秘境駅はまだまだ続く。13時53分、田本駅。ホームにはコンクリートの壁が迫っている。反対側は崖で、前後はトンネルである。誰が利用するというのか、どうしてこんなところに駅を設けたのだろうか。
 天竜峡14時13分。乗客が数人下車した。川下りを楽しむのだろう。私もかつてこの天竜峡を見物したことがあるが、今は廃線になってしまった、宮崎県の高千穂鉄道で行く高千穂峡に匹敵する景勝だったという記憶がある。
 飯田14時42分着。路線名にもなった沿線随一の町である。長野県で県南の中心都市で、私はかつてここで泊まったことがあるが小さな城下町だった。
 上片桐付近で、右窓に大きな虹が見えてきた。数分間降った雨がやんで虹の出る条件が重なったのであろう。とにかく左右の足も含め虹の全体が見られるというのも珍しいこと。とても美しい。
 七久保に至って左窓には木曽山脈が迫ってきた。雲の切れ間に木曽駒ヶ岳が見えた。あるいは南駒ヶ岳かもしれない。並んで見える。
 駒ヶ根を過ぎた赤木-沢渡間は、JRの最急勾配区間である。実に40‰もある。かつては信越線の碓氷峠越えが最大だったが、廃線となってこの区間が日本一となった。運転席のすぐ後ろで前方を注視していたが、隣に並んで立っていた車掌が、「もうまもなく最急勾配ポイントです。左に40‰の標識が見えてきます」と教えてくれた。赤木方面からは下りだし、電車でもあるから感覚的には転げ落ちていく様子でもない。
 伊那市で老夫婦が乗ってきて相席となった。80歳ということだが夫婦ともにとても元気。房総の大原へ行くという。観光目的で、帰途は成田山にも寄りたいとのこと。聞くと、今年の冬はとても暖かいとのこと。もともと雪は積もっても20センチ程度で積雪量はたいしたことはないとのこと。ただ、寒さは厳しくて零下10度にもなるということだった。
 そうこうして辰野17時18分着。飯田線はここまでだが、列車は岡谷まで行くのでそのまま乗っていた。くだんのご夫婦がどこまで行くのかというから、今晩は下諏訪に泊まると答えたら、それはいい、下諏訪は温泉がいいと言い、お土産には塩羊羹がおすすめだとも。
 辰野まで延々6時間半を超した。長い汽車旅だったが、まったくあきなかった。うとうとすることさえなかった。そう言えば、くだんのご夫婦がどこから乗ってきたのかと問うから、豊橋からと答えたら、それは大変だとあきれていたら。
 なお、同じように普通列車で単一線区内を1本の列車で乗り通すということでは、宗谷本線の旭川-稚内間が2番目の長時間区間で、旭川を14時12分に出た列車が稚内に到着するのは20時20分となり、所要時間は6時間08分である。なお、宗谷本線は全線259.4キロあり、駅数は54駅である。
 比較してみると、飯田線は195.7キロに94駅だから、飯田線がいかに駅数が多いか、駅間距離が短いかがわかろうというもの。


   


写真1 秘境駅の一つ田本駅。列車の反対側はうっそうとした樹林の崖である。


写真2 天竜川の流れが右窓に変わった。川路付近で。


写真3 左窓には木曽山脈が続く。雪が残っていて雲の切れ間から荒々しい山容を見せている。

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