2016/02/09

夷酋列像

 夷酋列像とは、18世紀末に松前藩の蠣崎波響がアイヌを描いた肖像画。フランス・ブザンソン美術館所蔵の作品が里帰りして先週まで千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で展示されていた。また、会場ではブザンソン蔵のみならず国内美術館所蔵の模写作品も展示されていて夷酋列像を巡る全体像がわかるような展示となっていた。
 夷酋列像についてはその存在は早くから知る人ぞ知るものだったようだが、ブザンソン本が展示されたのは画期的なことのようで、幻の名画と言われる作品を目の当たりにできたことははなはだ幸いだった。
 夷酋列像には12点あって、このうちブザンソン本は11点。いずれもアイヌの有力な首長を描いていて、言わば連作肖像画である。
 作品は意外に小さくてせいぜいB4くらいの大きさか。しかし、保存状態がよくて作品の隅々までくっきりとわかる。
 それでわかったこと。私は大きなルーペを持参し子細に観察したが、一つにはものすごく微細だということ。髪の毛やすね毛まで1本1本が丁寧に繊細に描かれている。これは圧倒的感動だった。二つには彩色が豊かで、着ているものが豪華ということ。この衣服については作画にあたって松前藩が貸与したもののようだが、それにしてもアイヌの首長というものは何と威風堂々としていることか。また、威容であり異様でもある。
 波響は松前藩主の弟ということだが、それにしてはこれは武士の手慰みと思われない練達ぶりで、江戸に出て絵画を学んだというのもうなずける。
 夷酋列像制作の背景には、根室地方で起こったアイヌの反乱について、幕府から松前藩の統治能力が疑われ、その打開策として波響はこの作品を携え内地で宣伝工作を行ったもののようだ。
 その効果はあったようだが、波郷の作品に驚愕するもの多く、天皇の目にまで留まったということである。また、その際、模写をするものがあって、それが今日に伝わっているということで、模写品は今日に数種あるということである。
 ともかく、絵画の場合、実物を見た場合の感動は少なくないが、この夷酋列像ほど実物に接した価値の高いものもないように思われた。


写真1 夷酋列像が展示されていた国立歴史民俗博物館外観。


写真2 夷酋列像の1枚「イコトイ」(19世紀小島貞喜模写による北尾家本=会場で販売されていた絵はがきから引用)


写真3 夷酋列像の1枚「ツキノエ」(同)

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