2016/01/07

日光から南会津へ

 このたびの年末年始休暇では旧臘29日に日光から南会津へと出かけた。年の瀬のぶらり一人旅はもはやここ10数年来の習慣で、それもできれば大晦日がある種寅さんにでもなった気分が味わえてよいのだが、このたびはそうも事情が許さなかった。
 行き先も日帰りあるいは泊まりがけでと様々にあちこちへ出かけてきたが、このたびはまずは日光へ。それにしてもなぜに今さら日光なのか。日光にはたびたび訪れているし、冬の日光も初めてでもない。
 ただ、JRの日光線に久しぶりに乗ってみたかった。日光へは東京からなら東武鉄道で来るのが一般的。JR自身が、新宿から日光へは途中から東武鉄道に乗り入れて日光へ向かっているくらいなのである。
 つまり、JR新宿発東武日光行き列車は、途中、栗橋駅構内でJRから東武鉄道への渡り線で移るようになっているのである。この列車にはかつて乗ったことがあるのだが、栗橋駅は、JR線と東武線はお互いのホームは少しだけ離れているのだが、多くの側線がまるで一つの駅のように並んでいたのだった。なお、この列車は日光線をまったく経由しない。
 それで、JR宇都宮駅5番線ホーム。9時32分発日光線日光行き。4両電車。ロングシートがほぼ満席。西洋人の姿も少なくない。さすがは日光線だ。車内アナウンスも日本語と英語。ただ、中国語と朝鮮語はなくて、この頃の日本としてはこれも面白い。
 文挟(ふばさみ)あたりから左窓に杉並木が見え隠れしながら並行していて日光の近いことが察せられる。そうこうしてJR日光10時21分定刻着。2面3線のホームだが、使われているのは本屋側片面1線のみ。
 駅舎は堂々たる木造建築で、歴史的建造物であろう。往時の姿を上手に残していて、2階のホールはかつての1等乗客用の待合室だったという。全国には名駅舎が少なくないが、門司港駅などと並んでその代表的なものの一つであろう。
 降り立つと日光は粉雪が舞っていたが、折角日光に来たのだから輪王寺にお参りすることに。バスで向かったらすぐ隣が東武日光駅だった。5、6分で到着。ただ、輪王寺は本堂が修復工事中で、大きな覆いですっぽり覆われていた。それで、焼香は裏側にある護摩堂で済ませた。続いてすぐ隣にある東照宮に詣で、すぐに引き返した。
 帰途は東武日光から南会津へ向かった。東武日光駅はJR日光駅に比べ格段に賑わっている。やはり日光の中心は今やこの駅なのであろう。東武日光を出発するとすぐに右窓少し低いところにJR日光駅が見えた。
 乗った列車はAIZUマウントエクスプレス。東武日光から会津若松へ直行する快速列車である。
 東武日光を出ると東武日光線から下今市で反転して東武鬼怒川線に移り、鬼怒川温泉を経て野岩鉄道に入ると、川治温泉、湯西川温泉、中三依温泉などと名だたる温泉場が続く。トンネルの連続で、トンネルとトンネルの間に駅があるという感じ。途中下車したい気持ちを抑えて乗り続ける。
 目的地は会津高原尾瀬口。ここは野岩鉄道と会津鉄道の接続駅で、この駅付近はまた栃木県と福島県との県境でもある。トンネルを出て福島県に入ったとたんに雪が深くなったようだ。
 駅から徒歩数分、橋を渡るとすぐが目指す一軒宿。格別の風情も何の変哲もないが、ここの温泉がとてもいい。足元の源泉からわき上がった湯がそのまま湯船に溢れている。源泉掛け流しを謳う温泉はいくらでもあるが、加温加水をまったくしない源泉そのままという温泉は実は珍しい。
 源泉温度43度はそのまま湯温で、熱いお湯が好きな私としてはあと1、2度欲しいような気もするが、これはこれでとても気持ちいい。ゆったり入るには適温だろう。そう言えば、風呂から上がったら、ここの主人に随分と早かったねとあきれられたが、15分は入っていたはずでこれが私の流儀。また、風呂から川向こうを走る列車が見えるのも私には格別うれしいこと。
 風呂から上がっていただいたビールが、ほてった身体に気持ちいい。たくあん漬けも絶品で、まさに極楽である。年の瀬に鉄道に乗り、温泉に浸かる。1年の垢も流してこれは至福の時だった。
 なお、野岩鉄道は、会津高原尾瀬口からは会津鉄道となり、会津田島、湯野上温泉、芦ノ牧温泉などを経て会津若松へと至る。これは平野部を走る東北本線の補完路線のようなもので、実際、終始並行する道路は日光から分かれてあとは会津西街道となっており、奥州街道の脇街道である。
 もう一つ付け加えれば、日光からこの鉄道沿い、街道沿いには多くの温泉場が点々と続いているが、私はこの間の温泉にはその大半に入ったことがあって、いずれもなかなか風情があって好ましい。ただ、湯の熱さだけで判断すれば、ぬるい温泉が多くて、熱いということでは芦ノ牧温泉が断然である。


写真1 JR日光駅。名駅舎である。


写真2 雪景色にたたずむ会津高原尾瀬口の一軒宿。


写真3 宿から見た野岩鉄道列車。

お勧めの書籍