2015/12/24

講演『消費者事件 歴史の証言』

 なかなか興味深い講演だった。
 19日に八重洲ブックセンターで開催された『消費者事件 歴史の証言』と題する講演のことで、講演したのは及川昭伍氏。聞き手は名古屋経済大学教授田口義明氏。
 この講演会は、同名の著作の刊行記念として開催されたもので、著作も田口教授のインタビューに対し及川氏が答える形式で構成されている。
 及川氏は、経済企画庁国民生活局長、総合計画局長から国民生活センター理事長等を歴任、この間、一貫して消費者行政に携わり、「ミスター消費者行政」と呼ばれ、わが国消費者問題の先駆者であり第一人者。また、聞き手の田口教授も内閣府国民生活局長、国民生活センター理事等を歴任するなど現在も消費者問題の第一線で活躍している。
 講演会は、著作を下敷きにそれを敷衍しながら進められ、時折、著作には盛り込めなかった裏話等にも言及、大変興味深いものだった。
 講演で及川氏は、1965年に経済企画庁に国民生活局が設置され消費者行政課が発足し日本で総合的な消費者行政が始まって今年はちょうど50年になること。
 この間、わが国における消費者行政は産業界のみならず産業界に通ずる官庁の根強い抵抗等もあって苦難の歩みだったこと。とくに消費者の権利という視点に欠け、あくまでも消費者保護という内容が長く続いたこと。
 エポックメイキングだったことはPIO-NET(パイオ・ネット=全国消費生活情報ネットワークシステム)の構築。これはオイルショック時の物不足騒ぎの苦情への対応として導入されたFAX網が整備され発展したものだったとのこと。このシステムによって消費者と行政と双方向の情報に対応できるようになり、その後の消費者行政の力の源泉となったと語っている。
 その後、消費者行政に関係する法律の制定が進み、1994年にはPL法がやっと公布された。産業界から政界を巻き込み猛反対の末の難産で、実は日本はPL法制定で先進国中では最後の国だったことが明らかにされた。
 続いて消費者保護法が改正され消費者基本法となり2009年に消費者庁が発足したが、わずか6年ほどの間に大臣が20人も交代するなど迷走となり、この頃やっとまともな役所になってきつつあると指摘した。
 終わりに、自身の歩みを振り返って、「消費者の権利確立のための戦いだった」と語り、イバラの道だったと述懐していた。また、これからの消費者行政については地方行政の活力が肝要だとしていたのが印象的だった。。
 私は、たまたま及川昭伍さんとはかねて知遇を得ていて、著作『消費者事件 歴史の証言』もすでに読んでいたが、改めて講演を聴講して、かつての中央官庁には政策実現に信念を持った骨のある官僚がいたのだということに感服したし、及川さんが歩んだ道のりは「消費者主権」への歩みだったのだと痛感したのだった。


写真1 わが国おける消費者行政の歩みを語った講演会の模様


写真2 著作『消費者事件 歴史の証言』(民事法研究会刊)

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