2015/12/21

若手人材育成溶接コンクール

 19日土曜日、東京・大島の産学協同センターで開催された東京都溶接協会主催による第2回東京都高校生溶接コンクール。都下5つの高校が参加したほか、今年は東京都立多摩職業能力開発センターの学生も参加したところから、東京都若手人材育成溶接コンクールを併催する形で開催された。出場したのは総勢6校25名。
 開会式や競技要領説明会に続いて早速競技に入った。課題はA‐2F(被覆アーク溶接、中板下向溶接裏当て金あり)。
 競技の様子を見ていると、段取りもよくとてもスムーズな進行で、十分に練習の積まれてきたことがうかがわれた。制限時間は30分だが、余裕をもって終了する選手が多かった。第2回ということで、慣れてきたこともあるに違いないと思われた。
 今年の特徴は試験方法が第1回とは違ったこと。昨年は外観試験だけで審査が行われていたが、今年は外観試験に超音波探傷試験(UT試験)が加わった。
 これは、開会式で挨拶を述べた日本溶接協会東部地区溶接技術検定委員会中込忠男委員長(信州大学名誉教授)によると、外観試験だけでは成績に差がつきにくく接戦となっていたほか、外観試験だけで溶接部の良否を判定することは難しかったことによるとのこと。
 溶接の終了した試験材は早速審査に回された。外観だけで見る限り、総じてまずまずのできばえで、とくに第1回目だった昨年に比べては向上が見られた。
 また、UT試験の結果についても、中込教授によると、おおむね良好だったとのことで、二つの試験方法を合わせて採用したことによって、溶接の良否判定に安定した内容になったのではないかと話していた。
 溶接部の良否を判定する試験方法には、外観試験のほか非破壊試験方法として放射線透過試験(X線試験)やUT試験、あるいは破壊試験方法として曲げ試験などがあり、実際の溶接部の検査にはこれらの全部あるいは一部の試験方法を組み合わせて実施している場合が多い。
 これは、溶接部に存在するかもしれない欠陥を検出するに際し、溶接構造物によって最適な試験方法を選んで検査するためで、表面に近い部分の欠陥を重視するのか、内部の欠陥を検出したいのか、また、構造物によってはその形状から適用できない試験方法もあり、各種の試験方法が組み合わされて検査に採用されている。建築鉄骨においてはUT試験が一般的である。
 また、溶接の技量を判定する試験方法としてはJIS溶接技術検定試験においては外観と曲げが採用されているのが一般的。ただ、欧州などではX線で実施するところが多く、ISOに基づく国際認証技量試験においてもX線が規定されている。
 なお、溶接技術コンクールの審査のための試験方法としては、全国溶接コンクールに代表されるようにわが国では外観、X線、曲げの3つで組み合わせている場合が大半。いわば、あくまでも優劣を競うコンクールだけに成績判定のための試験を徹底しているものだ。
 ただ、高校生コンクールにおいては、多くの学校に参加を促すという意味からも外観だけを試験方法とするところが多い。
 もっとも、これでは、コンクールを重ねるごとに生徒の技量が向上し次第に成績に差異がつきにくくなってきているのが実情で、また、外観試験だけの成績が溶接全体の成績を反映しているのかという問題点も浮上してきている。
 実際、各地の高校生コンクールを見ると、外観試験のほか、曲げ試験を加えたり、X線試験と併用したり、ところによっては水漏れ試験や圧力試験を採用しているところもある。
 もう一つ、高校生コンクールにおいては、生徒の負担等も考慮すると、競技から審査、表彰までを同日内で完了させたいとするところが大半で、破壊試験である曲げ試験を採用すると同日内での審査、表彰はほとんど不可能で、この試験方法を採用するところは少ない。
 現在のところ、高校生コンクールにおいて、外観を試験方法として審査しているところが最も多いが、次第に他の試験方法との併用も増えてきているのが実情。
 東京都大会としても、このような情勢を踏まえて審査方法に外観試験のほかUT試験を加えたものだが、コンクールの審査にUT試験を採用した例は極めて珍しく、審査結果と内容に対する大会当事者のみならず全国の高校や溶接関係者の反応も注目される。
 なお、UT試験とは、溶接部に超音波を当て、その反響するエコーを計測して行う溶接部独特の試験方法で、内部に欠陥があればそれがエコーとして反応し、そのエコー高さによって欠陥の大きさなどを判定する。

 


写真1 開会式に臨んだ出場の選手たち。


写真2 熱戦が展開された競技会場の模様。

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