2015/12/08

佐藤忠良記念館

 12月6日の仙台市地下鉄東西線の開業初日に乗るべく仙台へ出かけた折、宮城県美術館に寄った。
 この美術館は、仙台市中心部からは広瀬川を渡った丘陵地帯にあって、ちょうど開通したばかりの国際センター駅から徒歩で数分のところにあった。私は、この美術館にはたびたび寄っているのだが、これまではバス便しかなくなかなか不便を強いられていた。
 周辺は青葉城址で、現在は文教地区となっている。並木の美しい通りを方角に見当をつけて歩いて行ったら、最初の交差点の右角に仙台二高があり、美術館はその斜め向かいだった。駅から一本道だし、迷うようなこともなかった。
 美術館ではこの日は本館で特別展としてピカソ展が行われていて、これも魅力的だったが、長い列ができていたしあまり時間に余裕もなかったところから佐藤忠良記念館に向かった。
 記念館は本館から棟続きの別館となっている。本館に展示されている松本竣介のコレクションがすばらしくてこの美術館にはたびたび訪れているのだが、実はこの佐藤忠良記念館にはこれまで寄ったことがない。かねて関心は大いにあったのだがそのつど時間に余裕がなかったのだった。
 佐藤忠良は、もとより戦後日本を代表する彫刻家。同年の舟越保武とともに新制作協会を立ち上げ活躍してきた。宮城県の出身である。
 会場に入ると、まず出迎えてくれたのは「母の顔」(1942)というブロンズ作品。温和で慈愛に満ちた表情をしている。作者30歳の時の作品らしい。とてもほのぼのとしていていつまでも作品の前を去りがたい。
 5つの展示室と屋外やロビー展示も含めると80ほどの作品が展示されていて見応えがある。大半がブロンズで若い女性像が多い。子どもの像も少なくない。
 若い女性像には自由な造形が感じられるし、子どもの像には豊かな表情が感じられる。どちらにも共通しているのは対象に対する深い愛情であろうか。作品のまなざしがそういう印象を強くする。舟越保武とは同い年だし、ともに戦後日本の彫刻美術を引っ張ってきた存在だが、同じ慈しみでも、舟越がどこまでも静謐で清楚な美しさが漂っているのに対し、佐藤忠良には人間的な温かみが感じられる。また、船越は石彫が多かったのに対し、佐藤は大半がブロンズである。
 展示室を巡っていて気に入った作品の一つが「記録を作った男の顔」(1977-78)というブロンズ。どうやら王貞治らしい。がっしりしていて、まなざしをも含め強い表情が感じられ、いかにも世界記録を打ち立てた男にふさわしい。すばらしい作品だ。制作年からして、ハンク・アーロンを抜き756号の世界記録を打ち立てたときのもののようだ。
 展示は屋外にも広がっていて、このうち、記念館の中庭にあった「夏」(1976)が印象的だった。似たようなポーズのものが数多く制作されているが、若い女性が風になびく髪を押さえ日差しを左手で遮っているポーズに特徴がある。
 なお、この中庭には、舟越保武の代表作「原の城」もあって、二人の関係を知るだけに大変印象深いものだった。


写真1 宮城県美術館佐藤忠良記念館の様子


写真2 中庭に展示されていた「夏」


写真3 佐藤忠良記念館の玄関前に立つ「若い女」

お勧めの書籍