2015/11/04

KWIC

 韓国最大のウエルディングショーであるウエルディングコリアの主催者はKWIC(韓国溶接工業協同組合)。
 韓国には、ほかに大韓溶接学会や韓国溶接接合技術協会などと溶接関係の団体があるのだが、KWICは産業界の代表的団体。
 1987年の設立で、当初は、その名の通り溶接機メーカーを中心とする中小企業の集まりだったのだが、その後業容の拡大が著しく、協同組合の名と組織はそのままに、今や、韓国を代表する溶接団体となっている。
 現在の会員数は175社。このうち、韓国法人が加入する正会員が125社、海外法人が加入することができる特別法人が50社となっている。
 事業は実に多彩で、その主なものを列挙すると、溶接展示会(ウエルディングコリア)の開催、全国溶接技能大会の主催、溶接技術者教育の実施、溶接技能者の育成、海外展示会出展支援などとなっている。
 このうち、ウエルディングコリアについては、今回はKWICの単独主催となっていたし(世界的にもこれはなかなか大変なこと)、日本と中国に挟まれて困難な時期もあったようだが、近年の開催はますます規模を拡大し内外で存在感を増している。
 全国溶接技能大会の主催も特筆される。毎年開催されており、溶接士が技能を競う大会で、大会には、団体部門、一般個人部門、大学生部門、高校生部門の4つの部門があり、それぞれに全国各地で予選を行い、本戦には160人が参加しているという。2007年からはじめられ、今年は17回目だったとのこと。とくにすばらしいのは、最優秀者には大統領から直接表彰されるということで、ほかに首相、労働部、教育部、産業部各長官の表彰もあるということだから、モチベーションも高いに違いなく、実にすばらしい。
 教育関係も熱心でいくつかのプログラムを持っているが、まず、技術者については、企業所属のエンジニアを対象に週末の研修会を実施していて、AWSやIIWの溶接技術者資格の取得を目指している。このため、蔚山に自前の教育施設を保有している。蔚山は現代重工など大企業の製造業が数多く立地していることで知られる。
 また、釜山にやはり専用の教育施設を持っていて、ここでは高卒やポリテク卒の技術者の高度化教育を実施している。溶接実技ブースが23あり(近々倍増し46となる予定)、技能実習ばかりか、座学の教育にも力を注いでいる。現場技術者の中核人材を念頭に置いて理論と実技を兼ね備えた技術者の育成を目指していて、溶接技能者のモチベーションを高めている。ここでは年間160人の技術者の教育を行っていて、しかもその費用の大半をKWICが負担している。
 会員企業の海外展開の支援も事業の一つ。具体的には海外展示会への出展を促していて、日本の国際ウエルディングショーやアメリカ、ドイツ、中国、ロシア各国の溶接展示会と提携して推進している。このたびのウエルディングコリアでも、提携各国団体のブースが構えられていた。
 私は、KWICとは関係が深くて、設立以来交流を行ってきている。また、ウエルディングコリアにもその第1回から全てに参加してきた経験を持っている。
 その経験でいうと、KWICの発展はここ5、6年ほどで大きく飛躍してきたように思われる。とくに会員の拡大が顕著で、それも、当初は中小企業が中心だった会員構成も、今日で大手重工や海外からの進出企業も加わるなどめざましい。また、政府機関との結びつきも関係強化されてきており、各種の支援策を上手に引き出しているという具合だ。
 そのKWIC発展の原動力となってきたのが、崔基甲理事長と姜承官専務理事を中心とした執行部であろう。
 崔理事長は、58歳。溶断から溶接まで幅広く手がけ韓国における有力メーカーであるHANTOの社長である。理事長に就任して3年目。理事長としての豊富を次のように語っている。
 「責任は重い。透明性のある運営を心掛けている。とくにKWICの利益というよりも、常に韓国の発展を念頭に置いている。お陰様で会員企業からの信頼性も向上しているように思う。」
「若い技能者の教育に取り組んでいる。その一環として、国内の工業高校に溶接棒を毎年1トンずつ寄贈している。韓国では若い技能者が減少している傾向にあり、一方で、技能を身につけたくとも費用の面で困難となっている現状がある。どうにか若い人に溶接業界に入ってもらうよう道筋をつけている。」
 一方、姜専務理事は53歳。工学博士の学位を持ち、IWEの資格も持っている溶接技術者でもある。ブルドーザーのごとき馬力の持ち主で、KWICの発展に邁進している。英語と日本語にも堪能で、国際的な交渉力にも長けている。
 持ち前の行動力とアイデアで次々と新しい事業を立ち上げている。教育事業にはことのほか熱心で、溶接技術者、溶接技能者の育成に取り組んでいる。このために蔚山と釜山に専用の教育訓練センターを設けたほか、高校生の溶接技能教育については、全国30校の工業高校に溶接棒を寄贈している。会員企業である溶接棒メーカーの協力も得て原価に近い価格で購入し、それを各校に毎年1トンずつ無料で寄贈している。1トンというのは、生徒たちが実習で使う年間の量にちょうど相当するのだそうだ。
 また、姜専務理事が心掛けているのは透明性のある運営だ。それまで名ばかりだった理事長の選挙も、会員の立候補による選挙とすることで民主化を図った。これによって意欲ある若い経営者が代表者に選任される道が開けた。
 さらに、3カ月ごとに事業監査、会計監査を受けるようにし、その内容を全会員に報告している。企業でいえば四半期ごとの決算発表のようなもので、まことに透明性の高い運営方法であり、この結果、会員の信頼性も向上したということである。
 姜専務理事とは、姜さんが専務理事に就任して以来だからもう10年近くにもなるか、私も昵懇にさせてもらっている。仕事はやり手だが、とても面倒見のいい人で、しかも先生や年上の者に対してことのほか礼儀ただしい。

 


写真1 KWICを牽引する崔基甲理事長(左)と姜承官専務理事

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