2015/10/23

古賀宏志さん

 三菱重工業長崎造船所からブラジルの造船所に出向している古賀宏志さんがこのたび一時帰国した。赴任する直前昨年3月にも訪ねてきて下さっていて、1年半ぶりの面談だが、元気はつらつとされていた。
 赴任地はブラジルの最南端リオグランデ州。地球を長崎のちょうど真裏にあたるらしい。サンパウロから飛行機で約1.5時間、そこからさらに車で5時間もかかるという。日本からなら40時間もかかるといってあきれていた。
 勤務はECOVIXのリオグランデ造船所。現地資本と三菱の合弁で5年前に設立された企業で、三菱の出資比率は30%。ブラジルには川崎重工やIHIのほか中国企業などが一斉に進出しているという。
 設備は超近代的であり、最新鋭造船所だということである。規模は長崎造船所の香焼工場を一回り小さくした程度の堂々たるもので、130×360?のドックと2千?クレーンを有している。従業員は当初1万人いたが、現在は5千人にまで減っているとのことで、随分と集約できたものらしい。
 とにかく日本の造船所ならうらやむほどのすばらしい施設を有しているものの、技術者の能力が低く、製造能率は日本の5分の1程度だという。技術者に管理や工程といった意識や認識は弱く、成り行き任せの仕事ぶりがはびこっているという。
 また、溶接技術のレベルは低く、溶接に関する団体もないらしい。溶接士については日系人が多く採用される傾向にあるということだっ
 古賀さんはここで、主に溶接技術チームと設備技術チームを統率しているとのこと。溶接士は流動的な面もあるが7百人から1千人に達するという。ただ、ブラジル人の気質として、のんびりしているし、悪くいえばやる気が見られないから、人数通りの能力にはなかなかならないとのこと。
 それでも、すでに1番船、2番船と竣工させ、現在、3番線、4番線を手がけているとのこと。建造しているのはフローティングの船体部分。VLCCの3万8千トンクラスに相当する。最終的には洋上の石油生産設備となる。
 古賀さんは、大阪大学大学院溶接工学専攻修士課程を修了、長崎で長らく造船工作に携わってきた。ちょうど62歳になったばかり。「この歳で海外勤務になるとは夢にも思わなかった」といいながらも、溶接技術の向上と普及という本来の業務を得て目を輝かせていた。
 古賀さんとは昵懇にさせていただいてきたのだが、とにかく溶接にかける情熱が素晴らしい。長崎在任中は長崎県溶接協会会長の要職を歴任されていたが、技術者や技能者の教育訓練には率先して指導力を発揮されていた。
 とくに、高校生溶接コンクールにはいち早く取り組まれ、この点、私とも大いに意気投合してご鞭撻をいただいた。
 赴任したのが昨年の3月。1年半になるところだが、国民性のあまりにも大きな違いに驚いたらしい。雪は降らず長崎よりは暖かいとのこと。牛肉と鶏肉が豊富で、料理はすべて甘すぎるか辛すぎるかだという。


写真1 ブラジルから一時帰国中の古賀宏志さん

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